諸橋近代美術館[福島・裏磐梯]
国立公園の景勝地でダリ三昧の休日を─東儀秀樹さん・典親さん親子
“イクメン”としても知られる雅楽演奏家の東儀秀樹さんと長男で中学1年生の典親(のりちか)さんは大の仲よし。共通の趣味の1つが美術鑑賞という2人が訪ねたのは福島の「諸橋(もろはし)近代美術館」です。国内最大のダリ・コレクションを前に、親子の会話が弾みました。
サルバドール・ダリ《宇宙象》 1980年 高さ275×幅145×奥行き60センチ ブロンズ、合成樹脂
二人を魅了したのは、脚が異様に細長い象。ダリが1946年に制作した油彩画《聖アントワーヌの誘惑》に描かれている象で、権威を象徴するオベリスクを背負っている。家族全員がアート好き。団欒時も美術番組を観ることが多いですね─東儀秀樹さん
磐梯朝日国立公園内に位置し、神秘の湖沼・五色沼に程近い「諸橋近代美術館」。
5万5000平方メートル以上もある敷地の池の畔に建つ美術館は、中世の西洋建築を思わせます。福島の実業家で同館の創立者である故・諸橋廷蔵氏が中世ドイツの美しい馬小屋をイメージして建築家に依頼し、完成させました。
玄晶石の風合いが美しい展示ホールは、天井高9メートル、長さ約100メートル。間近に観るダリの奇抜な彫刻群は好奇心を刺激する。コレクション最大の魅力は、スペイン生まれの奇才で20世紀を代表する芸術家の1人、サルバドール・ダリの作品346点です。特筆すべきは彫刻で、39点という数の多さもクオリティも素晴らしく、見応え十分。
(c)Salvador Dalí, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR Tokyo, 2019 E3387
サルバドール・ダリ 《テトゥアンの大会戦》 1962年 304×396センチ キャンバス 油彩
19世紀の画家マリアノ・フォルトゥーニの同名の絵画に感銘を受けて制作した大作。中央にダリと妻のガラ、ダリの当時の年齢を示す58という数字が描かれている。ほかには西洋近代絵画41点と、イギリスの現代女流画家PJ クルックの絵画33点も所蔵。開館して20年になる現在も、少しずつコレクションを増やしています。
そんな諸橋近代美術館は雪深い地にあるため、冬季の約4か月間は休館。東儀秀樹さんと長男の典親さんが“アートな遠足”を決行した日も、裏磐梯の山々にはまだ少し雪が残っていました。