心潤す緑陰の美術館へ 第3回(全10回)作品と向き合うことで感性を磨く、知的好奇心を満たす、あるいは心身をリフレッシュする……。目的はさまざまですが、いつ訪ねても「心潤す時間」をもたらしてくれるのが、美術館の第1の魅力です。夏休みシーズン。喧騒から離れた涼やかな美術館で心潤う休日を過ごしてみませんか。第1部はアートな遠足、第2部はアートな自由研究をテーマにお届けします。
前回の記事はこちら>> 第1部 家族で楽しむ“アートな遠足”
安曇野ちひろ美術館 [長野・安曇野]
ちひろの実家のあった安曇野に誕生して22年になる美術館は、信州産カラマツを多用した温かみのある建物。山の稜線と呼応する三角屋根など、周囲の雄大な自然と調和した設計が心憎い。「ちひろの絵がいちばん似合う場所です」と長男の松本 猛さん。世界の絵本に出合い、信州の自然に遊ぶ
名峰連なる北アルプスの麓、長野県は安曇野(あづみの)の北部にある松川村。米やりんごの田畑が広がり、清流が煌めく地に、村一番の観光名所「安曇野ちひろ美術館」はあります。
子どもの一瞬の表情や仕草をとらえ、柔らかな色彩とタッチで表現した絵本画家、いわさきちひろ。その名を冠した美術館は同館が東京に続いて2館目で、ちひろの作品を約9550点所蔵しています。
いわさきちひろ《はなぐるま》1967年 36.5×28.5センチいわさきちひろ《スイートピーの花とふたり》 1968年 38.0×53.9センチ
自宅の庭いっぱいに花を育てていたちひろは、作品にもバラやチューリップなどさまざまな花を登場させた。「信州花フェスタ2019」と連動して開催中の展覧会では、“花と子どもの画家”と称されるちひろが描いた花々の作品を多数展示。上の2点も観られる。5つある展示室ではその内の約90点を季節ごとにテーマを変えて展示しているほか、世界の絵本画家206名の作品なども展示。絵本好きの聖地です。
「でも、絵を観るのは二の次でいいんです」と笑顔で話すのは、ちひろの長男で同館創設者、美術・絵本評論家でもある松本 猛さん。
「お母さんがミュージアムショップで絵はがきを選んでいる間、おじいちゃんは寝椅子でくつろぎ、子どもは外の芝生を駆け回る。そんなふうに思い思いに楽しんでくれたら嬉しいです」
美術館の建つ「安曇野ちひろ公園」には村営のさまざまな施設もあり、なかでも必見なのが、黒柳徹子さんの著書『窓ぎわのトットちゃん』の世界を再現した「トットちゃん広場」です。古い車両を使用した教室は昭和の薫りが漂い、ノスタルジックな気分を味わえます。
Information
安曇野ちひろ美術館
長野県北安曇郡松川村西原3358-24
- 2019年7月16日まで『信州花フェスタ2019開催記念 ちひろ・花とともに生きて』展と、『ちひろ美術館コレクション展 列車でいこう!』を開催中。
〔特集〕“アートの国・ニッポン”を楽しみつくす夏休み 心潤す緑陰の美術館へ
表示価格は入館料以外はすべて税抜きです。
美術館の開館時間および入館・観覧料(すべて税込み)は、企画展・特別展で異なることがあります。展示替え期間などには臨時休館になる場合があります。
事前にご確認のうえお出かけください。展示作品は掲載写真と異なる場合があります。
撮影/大泉省吾 構成・取材・文/清水千佳子
「家庭画報」2019年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。