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世間のものさしでは測れない関係を描く 井上荒野さん『あちらにいる鬼』

2019.07.03

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今月の本

井上荒野(いのうえ あれの)さん

井上荒野(いのうえ あれの)
1961年 東京都出身。1989年に『わたしのヌレエフ』でデビュー。2008年『切羽へ』で直木賞。近刊に織田作之助賞作『その話は今日はやめておきましょう』『赤へ』など。


小説家の父・井上光晴さんと、娘の目には“父のためだけに生きてきた印象があった”という美しい母。そして父親と恋愛関係にあった瀬戸内寂聴さん。


世間のものさしでは測れない何かを共有していた3人をモデルに、月並みなことばでは語り得ない関係性を描いた、井上荒野さんの『あちらにいる鬼』。

「スキャンダラスに取られかねないことで注目されたくはなかったし、両親は亡くなっているとはいえ、寂聴さんはご存命なのに3人のことを書くのは無理だと、最初はそう思っていました。ただ、寂聴さんの話をうかがっているうちに、(寂聴さんの)父への思いにグッときて。

書くならご本人に読んでいただかないとフェアじゃないと、考えが変わったんです。もう1つは、やはり母への関心です。彼女がどんな人で、ずっとどういう気持ちで父といたのか。母にまつわる謎を解くことが、私にとってこの小説を書く大きなモチベーションでした」と荒野さん。
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