初演では、初共演ながら息の合ったコンビネーションで、14歳のチックとマイクを見事に演じきった。2017年8月に本邦初演された舞台『チック』が今夏再演されます。世界各国で翻訳されているドイツのミリオンセラー小説を舞台化したもので、主人公は、喧嘩が絶えない両親を持ち、学校でも誰にも相手にされないマイクと、風変わりな転校生チック。14歳の夏休み、2人はチックが無断で借りてきたオンボロ4輪駆動車で、あてのない旅に出ます……。初演に続いてチックとマイクを演じる、柄本時生さんと篠山輝信さんに話を伺いました!
――『チック』の初演、少年達のまぶしく切ない一夏の冒険に人生のいろいろが詰まった、胸がきゅんとなる素敵な舞台でした。篠山輝信さん(以下、敬称略):ありがとうございます。素敵な皆さんと一緒に芝居をやらせてもらえて、僕にとっても最高の夏でした。ただ、大変ではありました。基本的にマイクの一人語りで進めていく舞台なので、台詞の量がものすごくて。
柄本時生さん(以下、敬称略):初演のとき、稽古が終わってみんなが帰っていく中、1人だけ残って台詞の確認をしてましたもんね。
篠山:僕が止まっちゃったら、どうにもならないですもん。その分、会話でやりとりする場面は、ある意味、気が楽でしたけどね。柄本さんがどうとでもしてくれるので。
柄本:いや、僕も結構、台詞を飛ばしたりしてましたけどね(笑)。そういえば、本番中に1度、僕が劇中で操作するラジコンカーが故障して、動かなくなったことがあったんです。で、僕が動かすことを諦めたら、篠山さんが舞台袖に引っ込んで、予備の新しいコントローラーを持ってきてくれて。
篠山:そうそう! 機転を利かせようにも、僕にはそれくらいしか浮かばなかったんですよ。でも幕間の休憩時間に、柄本さんに「あれ、あのまんまでも行けましたよ」って言われて、うわ! この人、何者!?と思った。
柄本:せっかくだから、故障のままやったらどうなるか試してみたかったなと思って。車を掴んで手で動かしたら、かえってバカらしくて面白いんじゃないかなと。
篠山:すごいですよね。僕はテンパっちゃってるのに、ラジコンを操作している柄本さんは全然平気で、そんな発想が湧いてくるなんて。そういうところが、僕の中ではチックそのものなんです。得体が知れないんだけれども、何かこう自分にはないものがあって、その人と一緒にいることで、いろいろな経験をしていく……そんな柄本さんとの関係性が、そのままマイクにとってのチックみたいだなあと、稽古中から結構感じてました。
柄本:篠山さんは度合いで言ったら、ドがつくくらい真面目ですもんね。2人ともいわゆる2世の俳優だけど、だいぶタイプが違う(笑)。僕がもしプロデューサーとか演出家だったとしても、マイクとチックの配役は、やっぱりこういうふうに分けたような気がします。