かたや俳優・柄本 明さんの次男、かたや写真家・篠山紀信さんの次男。ともに2世同士というのも面白い。――回り舞台やラジコンカー、映像を使うなど、多面的に組み立てられている作品でしたが、小山ゆうなさんの演出はどうでしたか?柄本:僕ら俳優もアイディアを出しながら、一緒につくっていくような感じだったと思います。小山さんはドイツ生まれで、「ドイツの演劇はそういうやり方なんです」みたいなことを話されてました。
篠山:さすがだなと思ったのは、小山さんに「自由にやってみて」と言われた途端、皆さん本当に自由にやり出して、しかも毎回ちゃんと変えながら、それでコミュニケーションをとるんですよ。もちろん、僕以外の俳優さんの話ですけど。
柄本:いやいや、それは単純に、マイクは一人語りが多いからですよ(笑)。でも僕も今回はちょっと心配なんですよね。僕はこれが仕事で出る初めての再演の舞台なので、自分が飽きてないかな、稽古しながら“もうやったな、これ”って思わないかなって。
篠山:そういうところ、柄本さんぽいかも。本番に入ってからも、柄本さんは毎回変えてましたもんね。その引き出しの多さにはびっくりするし、違うトーンでやっても成立させてしまうところもすごい。続けて同じことをしたくない性分なんですかね?
柄本:そうなんだと思います。でも今回は、すでに1回つくったものがあるから、稽古しているうちに体が勝手に“ああ、こうやってたな”って思い出して、それを絶対やってしまう気がする。同じことをやったところで、もう初演を越えられるはずがないのに。
篠山:それはちょっとわかるな。作業量が多いので、僕は稽古が始まる前から台詞を覚える作業を始めたんですけど、“あ、ここはこういう言い方したな”って、初演の舞台でしゃべっていたトーンが結構甦ってくるんです。でも、なんでそういう言い方をしたのかっていう“中身”のほうは、すでになくなっていたりするから、その形だけなぞり出すと寒いことになるだろうなって。それが再演の怖さかもしれないですね。
柄本:そう、怖いですよ。それをやっていたら、とんでもないことになると思う。
篠山:ただ、今回はマイクのお母さん役が、あめくみちこさんから那須(佐代子)さんに替わるから、そこはいい意味で全然違う感じになるのかなと。
柄本:確かに、それは楽しみ。2人が旅先で出会う料理上手なおばさんや、アイスキャンディ売り、それから“カバおばさん”としても登場するし。ただ、あめくさんが初演のアイスキャンディ売りでやっていた「バキューン、バキューン、マグナム」が見られなくなるのは寂しいな。あそこだけは鮮明に覚えてますからね。俺の中でのベストアクトだったので。
篠山:本編には全然関係ない場面だけどね(笑)。あめくさんが自分でやり始めたことなのに、途中で毎回、急に照れて笑っちゃうもんだから、僕らもつられて毎回笑っちゃってたよね(笑)。