『チック』では、舞台の下手端で手話通訳者が進行に合わせて通訳を行う手話付き公演も2回予定されている。――篠山さんの印象に残っているのはどんなシーンですか?篠山:僕はやっぱり、チックと2人で夜空の星を眺めながら話をするところですね。青くせぇと思いながらも、すごく楽しかった。「50年後に会おう」っていうシーンも印象に残ってます。本番が始まったくらいから、何かこう突き抜けたというか、素直に言えるようになったんです。照れくさいけど、それでもマイクはこの人達と、50年後に会うことを約束したいんだ!という思いになれて。柄本さんは覚えてないでしょ?(笑)
柄本:いや、覚えてますよ。その場面では僕、木に名前を彫ってるんですけど、あれ、なかなか難しいんですよ。2人が話し終わる頃に彫り終わるように見せるっていうのが。
篠山:そうそう、小山さんが感動してましたもん。「柄本さんは適当に見えて、実はすごく細かく芝居してるのよ」「実はすごく篠山くんを支えているのよ」って。僕が1人残って稽古していると、小山さんはそうやって温かなエールの言葉を残して帰っていくんですよ。時々、グサッと来る言葉もありましたけど(笑)。柄本さんは小山さんにあまり細かく言われてないですよね。
柄本:ないですね。たぶんそれは、言っても俺が変わらないから(笑)。うちの親父(柄本 明さん)が言ってましたもん。役者にはいろいろ言ったほうがいい奴と言わない方がいい奴がいるから、演出するときはそれを見極めて言うんだけど、言っても変わらない奴っていうのもいるんだって(笑)。
篠山:ハハハ。柄本さんのそういうところがまた、チックなんですよね。俺は絶対にいろいろ言ってほしいタイプだな。