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菊乃井・村田吉弘【日本のこころ、和食のこころ】十一月 口切り 

2017.11.01

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茶の湯の亭主と客の関係は、料理屋の主人と客の関係と同じやと思うてます。前もいいましたが亭主の思いだけの一方通行はあかん。もてなしたいという思いと、それを受けとめて楽しみたいという心があってほしいですね。口切りのお料理はお正月の初釜より、ある意味おめでたい献立となります。例えば鯛や海老といった祝いの意味がある食材を使ったり、めでたさを演出する器を選び、掛け軸なんかもそうですよね。


初座の床の間には、この日の濃茶、薄茶の茶葉を詰め、網をかけられた茶壺を飾る。

十一月は茶人正月とはいっても、お正月とは季節が違います。一月は春、春らしい華やぎがあります。ひるがえって口切りは、侘びた、最後の茶を喫した十月の名残から一転、最初の茶をいただくという月。そのあたりを考慮しての祝いの演出となります。


 

今月お作りした進肴の「伊勢海老の金つば」(※次ページ)なんかも、お正月にお出しするなら赤絵の金襴手鉢なんかに盛りつけますね。口切りだから、るりの金襴手にしたわけです。秋深まる頃の祝いの表現として伊勢海老は黄身ごろもで金つば(黄色)にし、黄柚子をたっぷり添えて。秋の華やかさを黄色に託したわけです。料理はひと口でいただける寸法は当たり前で、盛りつけも、取りやすさも、取り回すことを考えて、次の客に回ったときにも景色がきれいであることが必要です。そしていただくお客も自分がどの料理を取ったらきれいに見えるかを考えます。これも双方向の思いやりの心ですね。

 
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