患者や市民の意見の重要性が法律や指針などで謳われる
いくつかの例を挙げてみましょう。
各学会などのガイドライン作成委員会では患者委員が活躍しています。
ガイドラインとは、ある病気や検査、検診に関して科学的根拠を吟味し、推奨の度合いを示して、患者や医療者の意思決定を助けるための文書です。
日本医療機能評価機構が運営するMinds(マインズ)は2007年以降、ガイドラインの作成マニュアルを公開しており、各学会等が参照しています。
17年の最新版では、患者・市民の視点を反映することは非常に重要で、医療者のみで作成した場合、対象となる集団の価値観や希望、重要視する点を見落としたり、見誤ったりする可能性がある、と明言しています。
なお、日本乳癌学会では06年から患者や看護師、薬剤師を中心に、医療従事者向けとは別に患者向け診療ガイドラインを作成しており、3年ごとに改訂しています。
都道府県の地域医療構想の策定においても国が患者・市民からの意見聴取を推奨しています。16年に実施されたアンケートでは多くの都道府県で患者・住民が策定委員になっていることが示されました。
臨床試験や疫学調査のような患者や一般の人がかかわる医学研究においては、研究開始前に研究機関が設置する研究倫理審査委員会の承認を得ることが必須です。
これは研究に参加する人の人権や安全を守り、一方でスムーズにその研究を進めるための審査です。
この研究倫理審査委員会は15年に施行された「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」により、一般の立場の委員がいなければ開催できないことが決められています。