山口蓬春記念館 [神奈川・葉山]
写真/山口蓬春記念館蔵
山口蓬春(やまぐち・ほうしゅん)
1893(明治26)〜1971(昭和46)年。北海道に生まれ、東京美術学校(現・東京藝術大学)西洋画科に入学後に日本画科に転科。1926年に帝展特選と帝国美術院賞を受賞、皇室買い上げとなり画壇へ華々しくデビューする。65年、文化勲章を受章。日本画壇に一筋の道を示した巨匠の美しき終の住処
葉山御用邸から歩いて10分ほど。緑繁る山を背に、海側に向かって建つ「山口蓬春記念館」。ここはかつて日本画家の山口蓬春が、妻や愛犬と晩年を過ごし画業に勤しんだ住まいでした。
文筆家の青木奈緖さんが訪ねたのは「山口蓬春記念館」。絵皿や筆などが使われていた当時のまま保存された画室は、蓬春の東京美術学校時代からの友人で、現代数寄屋建築の祖である吉田五十八(いそや)が設計した。暮らしの息遣いが各所に残るこの小さな美術館を訪れたのは、青木奈緖さん。
見どころとなっている、蓬春の友人である建築家・吉田五十八が設計した画室に入った途端「とても気持ちのいい場所ですね」と微笑みました。
大きな窓からは自然を感じられ、聞こえてくるのは鳥のさえずり。机の周りには、定規やはさみ、筆や膠(にかわ)を温める炉といった絵の道具が整然と置かれています。
絵のモチーフにするために、蓬春が四季折々の花を植えていた庭を散策する青木さん。伊東深水や橋本明治から贈られた花木もあり、当時の画家同士の交流が偲ばれる。「こうして建物を見せていただくと、ここであの作品たちが生まれたんだと強く実感します」。
記念館では画室以外にも、団欒していた居間や、使用していた食器類が並ぶ棚なども公開されています。