直接心が伝わってくる芸術家自身が手がける展示──Nʼs YARD
海外のコレクターからも注目され続けている奈良作品。個人のもとへと旅立っていった後は、どうしても鑑賞できる機会は少なくなってしまうもの。
“日本の身近なファンのかたにも作品を楽しんでもらいたい”。そんな奈良の思いが込められた「N’s YARD」は、どの場所にどんなふうに展示するかということも、冬季休館の間に本人が手がけています。
作品とともに、創作のインスピレーションにもなっている多彩なジャンルのどこか懐かしい“大切なものたち”が丁寧に並べられた空間は、さながらアトリエのよう。
展示室へと続く前室には、愛蔵するレコードジャケットや音楽に関するドローイングなどが飾られている。展示室を進んでいくうちに、おのずと作家の人柄や考え方がじんわりと伝わってくることに気がつくでしょう。
那須近郊で採掘される芦野石の外壁で覆われ、自然に美しく調和する平屋の建物のエントランスを入ると、奈良が若き日々を過ごしたドイツのデュッセルドルフ芸術アカデミーの廊下をイメージした空間が広がる。室内デザインやインテリアも本人がディレクションしており、細やかな美意識に満ちている。さまざまな感情を宿しているかに見える、作品の中の子どもたちと静かに向き合うひととき。深い共感とともに、記憶の彼方へ置き去りにしてきた子どもだった頃の自分自身の心に、久しぶりに会えるかもしれません。
〔特集〕“アートの国・ニッポン”を楽しみつくす夏休み 心潤す緑陰の美術館へ
表示価格は入館料以外はすべて税抜きです。
美術館の開館時間および入館・観覧料(すべて税込み)は、企画展・特別展で異なることがあります。展示替え期間などには臨時休館になる場合があります。
事前にご確認のうえお出かけください。展示作品は掲載写真と異なる場合があります。
撮影/鈴木一彦 構成・取材・文/鈴木博美
「家庭画報」2019年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。