『The Nature Rules 自然国家:Dreaming of Earth Project 』
崔在銀《hatred melts like snow》(2019年)日曜のギャラリーガイド時のみ鉄板に乗れる。ナビゲーター・文/中村桂子圧巻は鉄板を飛び石のように並べた崔在銀(チェジェウン)の作品《hatred melts like snow(憎しみは雪のように溶ける)》である。
壁面には、70年近くもの間、朝鮮半島を二分してきた鉄条網が火花を散らして溶けていく映像。
人が近づくことを拒否するトゲを消し、誰もが踏みしめられる板として置くというアイディアにこめたメッセージは強烈でありながら底に優しさがある。
なんとみごとな表現だろう。芸術にはこのような力があるのだと、しばし息を止めて立ちつくした。本来憎しみなどありようもない同胞を分断してきた時間の空しさを感じながら。
長い間、政治と軍事に翻弄され、誰も入れなかったが故に、非武装地帯(Demilitarized Zone =DMZ)は絶滅危惧種101種を含む5057種の生物がみごとな生態系をつくっているという皮肉。しかも300万個の地雷があり、鉄条網を外しても入れないのである。
そこに世界有数の芸術家の作品が並ぶ空中庭園をつくるという構想から始まった「大地の夢プロジェクト」は、「自然国家」へと展開していく。人間がつくるのではない、自然の法律で動く国である。