「僕が幼い頃に感じた夏だけではない軽井沢の魅力を、多くの人に体感してほしい」―星野佳路さん
星野佳路さんの自宅は、軽井沢の西隣、「星のや軽井沢」から車で15分ほどの御代田町にあります。
子どもの頃、そしてアメリカ留学から帰国した当初は旅館の敷地内に住んでいましたが、「仕事にどっぷりつかっていたので、それとは切り離されたプライベートな時間を持ちたかった。この家を建てた1995年頃は、まだ土地も安かったから(笑)」と星野さん。
コーネル大学の卒業論文「STRATEGY FOR RYOKAN INDUSTRY」は、発売されてすぐに購入したマッキントッシュで書いた。橋を渡り、2階にある玄関から室内に入ると、窓外一面に緑を望むリビングダイニングが広がります。
「今は主に東京で仕事をしていますし、子どもも成長したので、ここに来る機会は少なくなりましたが、冬はここを拠点にして菅平、志賀高原、白馬など、長野県内のスキー場に出かけます」。
夏にはテラスで家族と、あるいは仲間を呼んで、バーベキューを楽しむこともあると話します。
昭和10年頃の星野温泉旅館の外観。キツツキが巣を作るという自宅の庭の豊かな自然はまた、星野さんが幼少期を過ごした星野温泉ホテル周辺の自然と重なり合います。
「旅館のまわりの山や川のすべてが僕の遊び場でした。夏には車が渋滞するほど多くのお客さまがいらっしゃいましたが、実はそれ以外の季節も軽井沢はさまざまな美しい姿を見せてくれます。
夏の鬱蒼とした緑よりも、春の新緑の美しさに気づいたのは小学生のとき。3、4年生だった頃、自転車で遠出して見た小瀬(こせ)温泉の紅葉の美しさは今も脳裏に焼きついています。
冬の夜、零下15度の中を毎日歩いて通った旅館の大浴場。行くときは確かに寒いのですが、帰り道は体がぽかぽかになって、でも髪が濡れているとバリバリに凍りましたね。
冬の満月の夜はうっすらと雪が積もっているとそこに光が反射して、木々の葉がないこともあって、幻想的な世界が広がっていました」。
自身が体感した軽井沢の豊かな自然を、お客さまにも身をもって体験し、そして感動してほしい――星野さんの強い想いをのせて、2005年、四季を通じて軽井沢の魅力に触れられるリゾートとして、星のや軽井沢が誕生しました。
2003年に解体した星野温泉ホテルの木片を使って作った記念のプレート(右)は、社員全員にプレゼントした。誕生会に社員に配られたビジョナリーカップは、飲むに従って将来のビジョンが現れる。星野温泉ホテルで使われていたブックエンド。祖父の著書『やまぼうし』と愛読書のケン・ブランチャード著『Gung Ho!』【星のや軽井沢で“軽井沢の音”を聞く】
川のまわりに建てられた水波の部屋のテラスに佇む星野さん。客室は全室スイート仕様だが、間取りはそれぞれ異なる。