一重、八重、そしてスイフヨウ。妙蓮寺のフヨウは種類も豊富!
京都西陣にある妙蓮寺は正式名を「大本山妙蓮寺」といい、1294年に創建された歴史あるお寺で、十六羅漢の石庭や長谷川等伯一派の襖絵でも知られています。広い境内では四季折々の花が楽しめますが、なかでもフヨウの季節は美しく、一重咲きの白や濃淡のピンク、一重のスイフヨウ、八重のスイフヨウ、くす玉フヨウなど、花の種類が豊富に見られるのも魅力です。私がフヨウの名所としてここをおすすめしたい大きな理由が、ほかの社寺と異なり、観光客でごったがえすことがあまりないこと。なので、しっとり落ち着いた雰囲気の中で、ゆっくり静かに花を観賞できるのです。
門前から赤に近い濃いピンクの華やかなフヨウが出迎え、参道を進むと白やピンクの花が続きます。9月中〜下旬には参道のフヨウの根元にはヒガンバナの朱赤が咲き揃い、より見事な景色になります。さらに鐘楼を囲むように咲くピンクのフヨウ、そして本堂前には私が愛してやまないスイフヨウが咲いています。
スイフヨウは漢字では酔芙蓉と書きます。朝の咲き始めは白の花色が、時間の経過とともに淡いピンクに染まり、夕方には鮮やかなピンクに変化するさまを「酔う」と表現したいにしえの人のセンスはお見事。花によって色の変化の遅いものもあるので、1本のフヨウに白から濃いピンクまでが咲いている時間もあり、その優しく華やかなグラデーションは見るものの心をも酔わせてくれます。
鐘楼を優しく彩る一重咲きピンク花。
すっきりした美しさの一重咲きの白花。写真/横田秀樹