2013年には、「StarS」(井上芳雄さん、山崎育三郎さんとの3人ユニット)を結成、日本武道館でのコンサートを成功させた。
――『ペール・ギュント』といえば、青年ペールが母と恋人を故郷に残し、自由気ままに世界を放浪する奇想天外な“自分探し”の冒険譚。イプセンが書いたこの“劇詩”のどんなところに魅力を感じていますか?
「150年くらい前に書かれた作品なのに、今も全く色あせない、ポップで斬新なタッチに惹かれます。しかも、人間愛や人生において大切なものは何か?ということが、深く描かれている。仮の和訳をいただいて以来、毎日1度は必ず読んでいるんですが、読むたびに“ペールはこう言っているけれど、実は全然違うことを考えているんじゃないか?”というふうに、いかようにも受け取れて、本当に一筋縄ではいかない作品だなと感じています。でも、それでいいのかなと。人生は人それぞれで答えなんてないですし、ペールの台詞にも出てくるように、自分のことがいちばんよくわかっていないのが人間なんでしょうね」 ――いつも、そんなに早くから台本を読み始めるのですか?
「いえ、台詞の量が多いときだけです(笑)。読むほどに頭でっかちになって、迷路に迷い込むこともありますが(笑)、読むことで恐怖心が少し薄らぐというか、ソワソワする感じがちょっと緩和される気がして。たぶんペールと同じように、自分に自信がないんだと思います。ヤンさんはそこを見抜いて、僕にぴったりの役だと思ってくださったんでしょうね(笑)。そう考えると、自分が今、『ペール・ギュント』に立ち向かっていることも必然なのかなと。この作品を自分の中でちゃんと消化していくことが、これから役者ないし人として生きていくうえで、一つの道しるべになるような気がしています」 来年は2月にミュージカル『ブロードウェイと銃弾』、5月~6月に『ヘンリー五世』、8月にミュージカル『ゴースト』に出演予定。
――ミュージカルでも大活躍されている浦井さん。今回の『ペール・ギュント』でも歌を披露する可能性があるとか。歌は昔から得意だったのですか?
「歌は好きで、学生時代は軽音楽部でヴォーカルをやったりしていたんですが、発声法も何も知りませんでした。歌をきちんと習い始めたのは『エリザベート』というミュージカルに出ることになってからです。だから僕は、大学の声楽科や、ミュージカルやオペラの劇団で歌のレッスンを積んできた方や、歴史ある劇団でお芝居の基礎やメソッドを学んだ方に比べると、修業が全然足りない。先輩方や同世代で活躍している友人達が色々な言葉で支えてくれたから、ここまでやって来られたんだと思います」