包括的な診療を行うことで病気の進行を遅らせる
若年性アルツハイマー病は、進行が早く症状も重くなる傾向があるため、老年性とは異なる対応が必要です。
「それは治療面だけではありません。働き盛りで一家の生計を支えている人が多く、休職や退職で働けなくなるうえに住宅・教育ローンが重くのしかかるなど、高齢者より経済的ダメージが大きいのです。また、未成年のお子さんや年老いた親御さんは、患者さんの認知症を受け入れることができません」と新井先生は若年性アルツハイマー病の患者が置かれた状況について説明します。
それゆえに、新井先生は包括的な診療を提供することが重要だと考えます。
同専門外来では、専門医が家族だけでなく職場の上司や同僚に病状や対処法を説明したり、医療ソーシャルワーカーが社会保障制度の活用についてアドバイスしたり、看護師がデイケアなどの社会福祉サービスの調整をしたり、臨床心理士が心のサポートをしたりするなど、あらゆる方面から患者の生活を支えることに治療と同じくらい全力を尽くしています。
さらに家族ケアも重視し、診療中に家族の訴えに耳を傾けるほか、同じ境遇に置かれた人たちで支え合えるよう、家族会での交流などにも熱心に取り組んでいます。
「包括的な診療を行うことで本人・家族の精神的安定が得られ、さらにアルツハイマー病の進行も遅らせることが可能なのです」と新井先生は強調します。
初老期で発症しても定年まで安心して勤め上げられるような手厚いサポートを目指し、チームが一丸となって診療にあたっています。
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アルツクリニック東京
東京都千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー7階
アルツクリニック東京 若年性アルツハイマー病 初診専門外来 〔主なスタッフ〕医師5名 看護師3名 臨床心理士3名 事務スタッフ4名 〔主な連携先の診療科〕近隣の循環器・消化器内科クリニック、眼科クリニック、大学附属病院、在宅医療診療所 同クリニックへの受診を希望する場合、初診・再診ともに予約なしでも受診できるが、予約が優先となるため、電話による事前予約が望ましい。受診の詳細については同クリニックのHP「診察予約」をご参照ください。
https://alz.tokyo/medicalguide/ 〔費用〕 検査・治療 保険診療 認知症予防脳ドック「健脳ドック」 自費診療60万円(税別)
【参考情報】 ●認知症の疑いがあり相談や受診をしたいとき 国では認知症を専門的に支援する「認知症疾患医療センター」の整備を進めており、2018年1月末現在、全国で422か所の医療機関(大学病院、総合病院、精神科病院、診療所)が指定されている。若年性認知症支援コーディネーターが配置されている施設もある。指定医療機関の所在は都道府県の担当窓口に問い合わせるか、自治体HPから探せる。 ●若年性アルツハイマー病の専門医を探したいとき 日本認知症学会では「認知症専門医」を認定しており、HPで都道府県ごとに認知症専門医を検索できる。 日本認知症学会「専門医一覧はこちら/日本認知症学会認定専門医」
http://dementia.umin.jp/g1.html 取材・文/渡辺千鶴 撮影/八田政玄
「家庭画報」2019年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。