六道さんにご先祖の霊をお迎えにいくところから京都のお盆行事は始まります。16日の送り火でご先祖様をお送りし、行事は終了。秋はもうそこまできています。精進のだしで野菜を揚げ煮にした食べ応えもある精進炊き。夏の夕餉にしみじみとした滋味をもたらしてくれます。詳しいレシピは次ページ>>料理・文/大原千鶴
8月。お盆がやってきます。
盂蘭盆の前、7日にお墓参りをしてご先祖様を迎えますが、京都では多くの方が六道参りに行きます。
大和大路四条にある六道珍皇寺はあの世と現世をつなぐ場所。そこにお参りし、鐘をつき、水塔婆をもらい、高野槙の枝にご先祖様をのせて自宅に連れ帰るのです。
そうして13日から4日間、朝昼晩と、お夜食まで用意してご先祖様をもてなします。
今ではそういったことをなさるお家も減ってきてはおりますが、あのお盆に入る時のなんとも言えないとろりとした夜気と珍皇寺の提灯の明かりは、本当にご先祖様がうちに帰っていらっしゃるのだと肌で感じさせてくれます。
用意する御膳はお出汁まできちんと精進で、昔はお下がりは食べずに川に流しました。今は町内にお供えを入れる箱がおいてあり、そこに入れます。
小鍋に残ったお供えのお残りの料理を少しお味見。たまにはこういうお料理も今でいうデトックスな感じがして体が喜ぶ気がします。
思えば私たちの食生活は殺生の上に成り立っています。当たり前のようにスーパーで肉を買い、魚を求め、美味しいだの不味いだの。知らず識らずのうちに傲慢になっているのかもしれませんね。
そんな中、想いを込めて作る精進料理はそういった奢った気持ちを戒め、年に1回心静かに料はかることの意味を考えさせてくれるいい機会になっています。
あっという間にお盆が過ぎ、五山の送り火とともにあの世にご先祖様をお送りしてちょっと一息。夏の終わりがやってきます。
少し寂しい気持ちとともに、子供たちはやり残した宿題の山に頭を抱え、私たちは次の地蔵盆の準備に大わらわとなります。
用事をこなし、地域の行事に参加し、京都の夏の終わりは暑いながらも深く濃く更けていきます。
お盆の塗りの御膳を片付けながら、お肉が大好きだった祖父にはやっぱりすき焼きを、ウイスキーが大好きだった父にはバランタインの17年ものとダビドフのタバコをお供えしてあげたかったなぁ、と不謹慎ながら思ってしまうのでした。
食べることは命をいただくこと。8月はその思いに向き合う季節です
今どきは精進のだしでお料理する機会は少ないですが、この煮物は夏野菜の味をダイレクトに感じられますし、暑くて食欲のないときに最適です。
冷製ス―プもみょうがや青じそなど和のハーブで爽やかにいただけます。
おからのコロッケは卵液の代わりに長いもを使うのがミソ。さっぱりとします。パン粉は目が細かいほうが品よく仕上がります。
そして夏バテに是非お試しいただきたいのがしそジュース。シンプルながらしそのおいしさが生きた、私自慢のジュースです。