医療情報を求め、生かすためのケーススタディー
ケース(1)
血圧を下げる健康食品の情報を医師に伝えたら、露骨に嫌な顔をされた
高血圧で内科のクリニックに通い、経過を見続けているAさん(53歳)は、医師から血圧を下げる薬を飲み始めることを提案されました。
すでにほかの薬を4種類も飲んでいるAさんはこれ以上増やすことに抵抗があります。インターネットで薬以外の治療法を調べると、トクホのサプリメント情報を得ることができました。
なかでもよさそうな商品の情報を印刷して診察時に持っていき、主治医に「このサプリメントが効くのではないでしょうか」と聞くと、明らかに不機嫌な表情に。伝え方が悪かったのかと反省しています。
【患者の心得】
“何のために”この情報について聞くのか、目的を明確に伝える「素人なのでよくわからないのですが、これは信じてよいものでしょうか」と医師に信頼性の吟味をゆだねるスタンスで持ちかけるのがよいでしょう。
そのうえで、何をしたいので(あるいはしたくないので)この情報の何について聞きたいのか、自分なりの目的を明確に伝えることが大事です。
「薬を増やすことに抵抗があり、ほかに効果を期待できる何かがあれば試してみたい。たとえばこのサプリメントの信頼度はいかがでしょうか」のように具体的に尋ねると真剣さが伝わり、治療法の選択肢として期待できるかなど有意義な意見を引き出すことができます。
ケース(2)
ネットに溢れる病院ランキングや名医情報。どれを信用したらいいのか
健康診断の結果、「肺がんの疑いあり。要精密検査」の通知を受け取ったBさん(51歳)。
不安が募り、インターネットで「肺がん」「肺がん 病院」「肺がんの名医」など思いつくままに入力して検索をしました。
すると病院ランキング、名医リスト、特定の病院や医師、独自の治療法、患者の体験談などさまざまなサイトが入り交じって大量に表示され、センセーショナルなタイトルも目をひきます。
片っ端から開くうちに訳がわからなくなり、何も確実な情報を得られないまま終了。信用できる情報を見分ける目安を知りたいと考えています。
【患者の心得】
目安は、手術件数の多い病院と、「専門医」の資格のある医師Bさんのようなかたは最近とみに増えています。医師の立場から推奨できる情報源のいくつかをご紹介します。
病院のホームページに記載されている疾患ごとの治療や手術の年間件数、治療成績は、その病院における治療の信頼度を知る参考になります。また医師選びには、学会の定める「専門医」の資格をとっているかどうかが重要な目安となります(各学会のホームページに掲載)。
標準治療(治療効果の証明された、現時点で最高の治療法)に関しては、厚生労働省の委託事業「Mindsガイドラインライブラリ」の情報が参考になります。
ケース(3)
相談したい情報が山ほどある
子宮筋腫の摘出手術に踏み切れずにいるCさん(49歳)。
インターネットでさまざまな漢方薬や「切らない最新療法」など多くの選択肢を見つけ、よい方法がないか医師に相談したいと考えています。
【患者の心得】
厳選情報を“1回の診察に1つ”多くの情報を頻繁に持ち込むと本来の診療に支障を来すことになります。
情報の出所が確かか、スポンサーがらみではないかなど、自分なりに信頼性を吟味した情報に絞り、多くても“1回の診察につき1情報”を目安に尋ねるようにしましょう。
※次回は、「医師と患者の役割分担」についてお届けします(8/13公開予定)