ランビエルさん扮する息子・朱雀君を愛するがゆえに、どんどん悪事に手を染めていく母・弘徽殿女御を怪演した荒川静香さん。最後の最後、遂に母に反旗を翻した朱雀君が、息絶えた母を抱きかかえて歩くシーン。豪華絢爛な衣装は自ら着ているだけでも相当な重さのはずですが、ランビエルさんの体力腕力に脱帽したシーンでした。しかも、この切なげな表情。もはや朱雀君にしか見えません!『源氏物語』の世界観に、見事に溶け込んでいたランビエルさんとリプニツカヤさん
そして圧巻の場面のひとつだった第一幕第四場。光源氏演じる髙橋選手と朱雀君演じるステファン・ランビエルさんが舞い踊るシーンのなんと美しいこと。
その雅で幻想的な姿に、平安時代へ誘われるようでした。「ライバルとなっていく朱雀君には当初、俳優をキャスティングする話もあったのですが、髙橋さんにとっても相手にも、もっと根源的にライバル意識を持ち、お互いを高められる人に演じてほしいと、僕が懇願してランビエルさんをキャスティングさせてもらいました」と宮本亜門さんが語っていますが、ランビエルさんの起用は本当にgood job!だったのではないでしょうか。
長年、リスペクトし合いながら切磋琢磨してきた髙橋選手とランビエルさんだからこそ醸し出せる、心の奥深くのやりとりを光源氏と朱雀君から感じ取ることができたのだと思います。
7月26日の初回公演が無事終わり、拍手喝采のなかで出演者たちが挨拶した際、両目ともに裸眼視力1.5以上を誇る家庭画報フィギュアチームのスタッフが「ランビエルさんが目頭を押さえているのが見えた」と言っていました。
数え切れないほど、アイスショーに出演しているランビエルさんでも『源氏物語』で朱雀君を演じることは、やりがいとともに半端ない重圧もあったのかもしれませんが、氷上で舞い滑るさまはまさに朱雀君でした。