第一幕第十一場。皆既日食のさなかに、手に手を取って都から逃げ出す光源氏と紫の上。和風の衣装が妙にしっくりと似合っていたリプニツカヤさん、暗闇の中でも疾走する、スケーティングのキレはさすがです。儚さだけでなく、芯の強さをも表情や舞いで表現し、光源氏との恋物語に奥行きを与えていました。髙橋選手とは初めての共演とのことですが、とても素敵なカップリングだったと思います。紫の上を演じたユリア・リプニツカヤさんにも唸らされました
15歳でロシア代表として出場した2014年ソチ五輪の団体戦では、SP(ショートプログラム)、FS(フリースケーティング)ともに1位となり、ロシアの金メダル獲得に貢献。現役時代から繊細で透明感のある演技には定評がありましたが、度重なる怪我や摂食障害などにより、2017年現役を引退。
現在、フィギュアスケーター養成機関「チャンピオンズ・アカデミー」の指導者として国内外を飛び回っている多忙さもあり、今までアイスショーに出たことは1度だけ。
この「氷艶2019」が2度目のショーだったわけですが、見事なまでに紫の上の、妖精のような可憐さと儚さを演じきっていました。
「これまでにないエンターテインメント作品であり、単なるアイスショーの枠にとどまらない、アーティスティックな演劇舞台であることに非常に興味を持ちました」と出演した理由を語っていますが、「氷艶2019」の志と、リプニツカヤさんの興味の方向性が合致した化学反応を目にすることができて、幸せでした。
氷上の心震わせるパフォーマンスは国境、言語の壁を越えますね。勇気を持って出演してくれたランビエルさんとリプニツカヤさんに、心からの拍手と感謝を送りたいと思います!