禁煙補助薬を使って離脱症状のつらさを軽減する
この禁煙治療は「標準禁煙治療プログラム」と呼ばれ、日本呼吸器学会など四学会が合同で作成した診療ガイドライン「禁煙治療のための標準手順書」に基づいたものです。
禁煙外来ごとにサポート法を工夫していますが、プログラムの期間と診療内容は全国で統一されています。
初回受診から2週間後、4週間後、8週間後、12週間後と5回の診療を受ける全12週間のプログラムです。
「禁煙でニコチンを断つと、イライラする、落ち着かない、不安、集中できないなどの離脱症状がすぐに現れます。最初の1週間が最もつらいため、離脱症状のピークをできるだけ楽に乗りきれるよう禁煙補助薬を使います」と舘野先生は治療のポイントを示します。
喫煙の心理や状況を丁寧に聞き取り、患者が実践できる対策を一緒に考える
禁煙補助薬には貼り薬と飲み薬があります。貼り薬はニコチンを含有し、たばこをやめても皮膚から持続的にニコチンを摂ることで離脱症状の出現を抑えます。
「約2か月かけて貼り薬から摂取するニコチン量を徐々に減らし、最終的にニコチンがなくても問題のない状態にして卒煙します」。
ニコチンの過剰摂取を避けるため、禁煙を始めたらたばこをきっぱりやめるのが原則です。
一方、飲み薬にはニコチンが含まれておらず、たばこをすぐにやめる必要はありません。
「脳内でニコチンを受け取る受容体に作用し、この薬を飲むと脳がニコチンで満たされているような状態になります。たばこで得られる快楽物質を維持してくれるため、離脱症状が現れません。
この薬の量を徐々に増やしていくと、たばこを吸ってもおいしいと感じられなくなり禁煙することができます」。
両薬の禁煙効果はほぼ同等であるため、薬の選択では副作用(貼り薬は皮膚のかぶれ、飲み薬は吐き気、車の運転の禁止など)の影響を検討するほか、患者の性格、生活スタイル、希望なども考慮し医師と患者がよく話し合って決めます。
※後編へ続く(8/26公開予定)
取材・文/渡辺千鶴 撮影/八田政玄
『家庭画報』2019年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。