太宰の気持ちも女性の気持ちもわかる。だから、「感情が忙しかった」
自殺未遂を繰り返すなど、破天荒な生き方で文壇から疎まれつつもベストセラーを連発して、時のスターとなっていた太宰 治(小栗 旬)。身重の妻・美知子(宮沢りえ)と2人の子供がいながら、作家志望の静子(沢尻エリカ)の文才に惚れ込んで愛し合うと同時に、未亡人の富栄(二階堂ふみ)にも救いを求め……。そんな太宰を描く映画の撮影現場で蜷川監督は「すごく感情が忙しかった」といいます。
「太宰に対している女の人の気持ちがすごくよくわかるから、いつも“もうホントにひどい”、“ホント、最低”って(太宰に)怒っていて(笑)。でも、太宰の気持ちもわかるから、“わかる。つらいわね、あなたも”ってなるんですよね」
そんな中、「今の物語としても観られるような角度をどれだけ増やせるか」に注意を払ったという蜷川監督。そして、「文豪・太宰というよりは、いち人間として強いところも弱いところもある。でも、とてつもなく魅力的な人」である太宰の姿をきちんと描きたいと思うと共に、「中途半端に人間くさいので、自分でやったことに対しても傷つくんですよね。その部分をどう、人間的に共感してもらえるように描くかが生命線で難しかった。そこを小栗くんがしっかり体現してくれたと思います」。
「(太宰は)誰のことも好きじゃないんじゃないか、創作にしか興味がなかったのではないかしらと思ったりはしています」と蜷川監督。