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風力で走る越前和紙の“生命体”?! この秋、テオ・ヤンセンさんのアートに福井で出会う

2019.08.30

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テオ・ヤンセンと瀧 英晃さん

「アマン東京」33階のロビー、ガーデンラウンジで再会を喜ぶテオさんと瀧さん。ここの吹き抜けの空間の和紙は瀧さんが漉いたもの。縦260センチ幅115センチの和紙を400枚、約4か月かけて漉いたのだそう。

テオ・ヤンセンさん Theo Jansen
1948年オランダ生まれ。デルフト工科大学で物理学を専攻。75年より画家として活動。90年に風の力で砂浜を進む立体作品「ストランドビースト」の制作を開始。欧米やアジアなど世界各地で開催されている展覧会では、生きているかのような躍動感のある動きが驚きと感動を呼んでいる。


瀧 英晃さん たき・ひであき
1979年福井県生まれ。福井工業大学卒業後、デザイン事務所などを経て2005年に家業の滝製紙所に入社。伝統技術と新しい感性を駆使して、さまざまな種類の和紙を製作。越前市の工芸の魅力を若い世代に伝える「千年未来工藝祭」の実行委員長を務めるなど、産地の活性化にも尽力している。

アーティスト テオ・ヤンセン×和紙職人 瀧 英晃が語る
砂浜で見た小さな奇跡


越前和紙とのコラボレーションが決まった当初、テオさんは楽しみにしつつも、「紙は水に弱く、破れやすいもの。うまくいくだろうかと、少し懐疑的でした」と話します。



テオさんのスケッチと図面。

その不安を見事に払拭したのが、越前和紙の職人、瀧 英晃さんでした。

「強度を考え、最初は二枚貼り合わせて作ったのですが、テオさんの作品が動いている動画を見て、軽さも同じくらい重要と気づき、一枚で薄くて丈夫な和紙を作る方向に切り替えました。コウゾだけだった原料にミツマタを加えたり、表面の強化のために塗るこんにゃく糊の濃度を調整したり。試行錯誤を繰り返して漉き上げました」



生まれ故郷であり、現在も暮らすスへフェニンゲンの砂浜で制作に没頭するテオさん。

2018年9月、完成作品の試走を見届けるため、瀧さんはテオさんの待つオランダへ。しかし、その日は雨交じりの強風が吹きすさぶ悪天候でした。

「でも、僕は大丈夫だと思っていたんです。さんざん自分で引っ張ったり叩いたりして強度を確認していましたから。それでも動画で見ていた砂浜を予想以上の速さで走るストランドビーストを見たときは、嬉しくて泣きそうになりました」と瀧さん。

越前和紙で作ったストランドビースト

越前和紙の帆はしわが作る柔らかい陰影が味わい深い。左右に羽のある本作の名は「オルディス・クォータス」。折り紙の要素を取り入れた作品「オルディス・クインタス」とともにまもなく公開に。

感動したのはテオさんも同じでした。

「雨に打たれたのに、和紙の損傷がほぼ皆無だったことに驚きました。なにより、越前和紙は風合いが美しく、肌触りがいい。私が楽しみながら造った作品を、福井のみなさんにも楽しんでいただけたら嬉しいです」。小さな奇跡のような作品を、ぜひ福井に足を運んで、直接ご覧ください。
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