漉き槽(すきぶね)と呼ばれる大きな水槽の前に立ち、襖サイズの和紙を製作中の瀧さん。コウゾと水、とろみをつけるためにトロロアオイの根っこから作る「ネリ」を混ぜたものをすくっては漉す(こす)という作業を繰り返す。色の濃さで仕上がったときの紙の厚みがわかるという。越前の工芸を支える“妥協のないものづくり”の精神
1500年の歴史を誇る越前和紙の産地は、大滝、岩本、不老(おいず)、新在家(しんざいけ)、定友からなる五箇(ごか)地区。現在も約60軒、約300人が和紙産業に従事しています。日本最初の全国統一のお札「太政官札(だじょうかんさつ)」の和紙が漉かれたのもこの地でした。
その昔、村人に紙漉きを教えたという女神・川上御前を紙祖神として祀る岡太(おかもと)神社・大瀧神社。国の重要文化財。越前和紙の特徴の一つは、襖紙に代表される大きなサイズの和紙。「大判の流し漉きを今も日常的に行っている産地は福井ぐらいだと思います。その技術があったからこそ、テオさんの作品に携わることができました」と瀧さんは話します。
日頃は製紙が専門ですが、今回は最後まで自分でやりたいと考え、地元の加工業者にアドバイスを求め、手揉みでしわを作りしなやかさを増すなどの工夫を凝らしました。「おかげで胸を張って越前和紙といえるものができました」。産地の結束もまた、越前和紙の大きな魅力といえそうです。