劇団四季時代には『人間になりたかった猫』『ライオンキング』『春のめざめ』で主演を務めた。――三谷さんと直接会われた際には、どんな話があったのですか?「僕の印象に特に残っているのは、三谷さんはシャーロックやワトソンが大好きなだけじゃなく、2人が活躍する小説の世界観そのものや、19世紀末のロンドン自体がお好きなんだなということ。ビクトリア女王がいて英国が栄えた半面、たとえば『エレファント・マン』のモデルになった人物がいたり、ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)の事件があったり……。シャーロックは架空の人物ではあるんですが、そういう英国の光と影みたいなものが一気に集まった19世紀末のロンドンがいかに面白いかという話をされていました」
――そんな時代の空気感は、今回の作品にも漂っているのでしょうか?「そうですね。当時の英国の階級社会……それは身分だけじゃなく、男と女とか長男と次男の関係も含めてなんですが、そういうものも作品のキーポイントになっているので。たとえば、横田(栄司)さんが演じる兄のマイクロフトは、シャーロックにとってはコンプレックスを感じるほど絶大な存在だったり。それは僕自身、まったく考えていないことだったので、すごく勉強になります。人間関係と時代背景とロンドンの街。三谷さんや共演の皆さんと一緒に、そういうものも全部含めた上でのシャーロック・ホームズをつくれたらと思います」
――コナン・ドイルの小説の『シャーロック・ホームズ』シリーズは、以前から読んだことがあったのですか?「小学生のときに子ども向けのものを読んだくらいだったので、この舞台が決まってから必死に読みました(笑)。メディアが騒ぎ立てるような大きな事件ではなくて、自分の興味が向く難解な事件、頭脳をフル回転させながら推理して、読者に“これからどうなるんだろう?”と思わせるような事件をどんどん解決していくところが、やっぱり面白いですね。たとえば、犯人が動物だったり、一見まったく繋がらないようなことがヒントだったり。そこが魅力の一つなんだろうなと改めて感じました」