出演者ともスタッフの意見とも、一人ひとり一つひとつに向き合う
10年ぶりに監督として映画製作に携わったオダギリさんは、今作は「商業映画であるという大前提があったので、わかりにくくなるような自分のエゴイスティックな部分はできるだけ排除しようと思っていました」と言います。その中で大切にしたのは、自分が感じたこととバランスだそう。
「編集期間に試写でスタッフに観てもらうときも、あのシーンはいらないんじゃないかとかいろいろな意見が出てくるんですけど、それに一つひとつ向き合いながらも、自分の信念は曲げないでおこうと思っていました。その意見もわかる。でも、このシーンは絶対に必要だと僕は思う。であれば、どうすればその意見に近寄れるかみたいな、バランスの取り方は細かく考えていました」
役者陣に対しても一人ひとり、それぞれに向き合ったオダギリさん。
「例えば、(村上)虹郎くんには、セリフ一つひとつのニュアンスを細かくアドバイスして。川島(鈴遥)さんに関しては、何か月もかけて、芝居とは何かを丁寧に学ぶことから始めてもらいました。柄本(明)さんは自分で演出もされるので、あまり人からどうのこうの言われるのは好きじゃないかなと思って。結局、その人の一番のよさを引っ張り出すべきですからね」
「同業者だから、どうコントロールされるとやりやすいのかがわかる。そこは自分が役者である強みというか利点だと思いました」