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菊乃井・村田吉弘【日本のこころ、和食のこころ】九月 重陽

2017.09.01

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節句は陰陽思想と深くかかわりがあります。陽数の最大である九が重なる九月九日は、重陽の節句。邪気を払い長寿を願う日です。旧暦でいえば、収穫にあたる時期でもあり、収穫祭の側面もありました。今月は重陽の節句のお話です。
ぐじの細造りを杉盛りに。菊の花びらを散らし、水前寺のりとわさびを添える。器は古染付菊向付。菊二輪を重ねた洒落た器形は、華やかな中に侘びた風情が感じられる。

 

五節句の中でも重陽の節句は菊にちなんだ、うちにとって特に大切な日です


白露は二十四節気の一つ。毎年、九月九日の重陽の前日か前々日頃にあたり、「菊乃井」ではこの日に開店するというのが決まりになっています。


露庵菊乃井も、赤坂店もそうでした。そして重陽は菊の節句でもあり、菊乃井にとってはとても大切な日であります。

皆さんは、節句って何か知ってはりますか?

節句はもともと中国の暦法からきています。同じく中国の陰陽思想では奇数である陽がよしとされ、偶数は陰数として嫌うというものがあります。

三月三日(桃の節句)、五月五日(端午の節句)、七月七日(七夕)、九月九日(重陽の節句)。一月一日は別格となり、一月七日(人日の節句)となります。陽の数が重なるとそれは陰に変わります。

ですので陽として最大の数である九、それが重なる九月九日は大きく陰にふれるので、かえってよくない日ということになり、それを払拭するため邪気を払って長寿を願う行事が行われたといわれています。

中国から入ったこの思想はまず、宮中に入り、もともとあった日本の風習や四季と結びつき、交じり合って節句になったと聞いています。

旧暦の九月九日は農作物の収穫時期でもあり、収穫の祝いと長寿を祈る風習が合わさって重陽の行事になったと考えられます。

重陽の行事といえば、まず思い浮かぶのが着せ綿です。これは、重陽の節句の前日に菊の花に綿をかぶせて、翌朝その露を含んだ綿で体をぬぐうと、健康で長生きをするというものです。ほかにも菊の花びらを浮かべた菊酒をいただいたり、菊の花を飾ったり……。

今では重陽の節句をされるおうちは少ないと思いますが、江戸時代までは五節句を締めくくる節句として盛んに行われていたそうです。


飾り棚には、山茱萸囊を携え、丘に登る中国の故事にちなんだ、有職雲上流の山茱萸囊を掛ける。
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