このインテリジェント手術室を進化させ、複数の工業用ロボットを動かす際に使われるネットワーク基盤を用いて、手術室におかれているさまざまな医療機器(下図参照)のデータを一元管理するシステムを入れたのがSCOT(Smart Cyber Operating Theater)で、東京女子医大ではその最も上位版であるHyper SCOTが2019年8月から本格稼動します。
手術室の機器のネットワーク化ここでは20を超える医療機器からのデータを時間を揃えて記録します。
ナビゲーションシステムや画像検査からの位置情報に時間の情報を加え、手術のプロセス、患者の生体や患部の変化などを術中あるいは術後に確認することが可能になるのです。
患者や医療スタッフにとって手術は重要であるにもかかわらず、「これまで患者さんには事前と事後に簡単な説明があるだけ、医療スタッフ用の手術記録はA4用紙1枚程度で、カルテの記載も多くありません。
それでは手術の成果を生かしたり、患者さんの理解を深めたりしにくい。Hyper SCOTはそこをカバーします」。
村垣さんがいうとおり、このシステムは若い外科医や医学生の教育に大きく寄与します。
「熟練した外科医による一瞬の判断はその理由を周囲に伝えるのが難しいのです。手術の直後に議論するような時間もなかなか取れません。そこで、このような記録が後で役に立ちます」。
長い手術で外科医が交代する場合、引き継ぐ外科医がこの記録を見ることで手術のプロセスもわかります。
また、患者や家族への説明にも使えます。
「万一医療事故が起こった場合でも手術を振り返りながら詳細な分析ができます」。