こまつ座&ホリプロ公演
『組曲虐殺』
プロレタリア文学の旗手・小林多喜二を題材とした、井上ひさし氏の最後の戯曲『組曲虐殺』。
井上氏の没後10年目となる今年、7年ぶりに再演されるこの珠玉の音楽劇に、新たに上白石萌音さんが出演する。
演じるのは、特高警察に追われる多喜二の身を案ずる恋人・瀧子。多喜二役は、2009年の初演以来、全身全霊で同役を務めてきた井上芳雄さん。
昨年のミュージカル『ナイツ・テイル─騎士物語─』に続いての舞台共演となる。
「まさかこんなにも早く、また芳雄さんとご一緒できるなんて。舞台の録画映像を見せていただいたんですが、純粋に胸を打たれました。
笑えるところもたくさんあって、『組曲虐殺』という強烈なタイトルの向こうに、希望を持って生きる人たちの強く温かい光を感じました」と萌音さん。
緊張もあるが、稽古が楽しみだという。
「昔から本を読んだり、役柄のことを考えるのが好きなので、自分でも調べながら、弱さと健気さと、すべてを笑顔で吹き飛ばすようなたくましさを持った瀧子さんを演じられたら。
毎公演、憧れの小曽根 真さんの生ピアノで歌えることも楽しみで仕方ありません。井上ひさしさんの詞の言葉の強さと、小曽根さんの日本的な音階が作る唯一無二の楽曲を、瀧子として歌えて幸せです」
鹿児島県出身で、小さい頃から歌や踊りが大好き。現在は、同じオーディションを機に芸能界に入った妹の上白石萌歌(もか)さんと2人暮らしをしている萌音さん。
「妹とは今も鹿児島弁で話しています。おかげで、オンとオフがうまく切り替えられます」と話す笑顔が、なんとも可愛らしい。
お互いに、台本の読み合わせの相手を頼むこともあるという。
「今回も頼むことになりそうです。言葉が勝手に独り歩きをしたり、それを恐れて発言を控えてしまったり......そんな今の時代だからこそ、共鳴できるものもある作品だと思います。
時代に翻弄され、わずか29歳で命を奪われた多喜二さんの生涯を、随所に感じられる井上さんご自身の人としての温かさみたいなものと一緒に、しっかり伝えたいです」
上白石 萌音(かみしらいし もね)
1998年、鹿児島県出身。2011年に「東宝シンデレラ」オーディションを機にデビュー。14年に『舞妓はレディ』で映画初主演。声の仕事でも活躍し、16年には歌手デビュー。ミニアルバム『i』が発売中。
表示価格はすべて税込みです。
取材・構成・文/岡﨑 香 撮影/大靏 円 ヘア&メイク/冨永朋子〈アルール〉 スタイリング/嶋岡 隆〈Office Shimarl〉
『家庭画報』2019年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。