五月のお料理としてお出しする新茶蒸し。茶そばを薄焼き卵で巻き、さらに甘鯛で巻いて蒸す。仕上げにお茶だしをかけて供する。爽やかな味で人気の一品。お茶は料理にも使われます。茶粥や今回ご紹介した茶そばとか、あるいはなまこを茶ぶりする、川魚の生臭みを取るといった調理過程にも。僕の若い頃は玉露をつまみにお酒をたしなむ、粋なご隠居さんもいはりました。お茶の出がらしだっておじゃこと炊いて佃煮にしてもおいしいものです。
「菊乃井流・お茶とちりめんじゃこの炊いたん」それにカテキンやビタミンなど栄養も豊富、昔は薬として飲まれていたほどですから。長い歴史、日本人が愛飲してきた日本茶です。ゆっくり丁寧に淹れたお茶をいただきながら、家族団らんのひとときなんていかがですか。
村田吉弘/Yoshihiro Murata
料亭「菊乃井」3代目主人。
京都の本店と木屋町店、東京の赤坂店の3店舗を統括し、この春に京都の本店の隣に、お弁当と甘味を供する「サロン・ド・無碍」をオープン。日本料理アカデミー理事長ほか数々の要職を歴任し、「和食」のユネスコ無形文化遺産登録に尽力。和食を日本文化の重要な一つと考え、世界に発信するとともに、後世に伝え継ぐことをライフワークと考える。
『家庭画報』2016~2017年の人気連載が一冊に。「和食文化」の奥深さを菊乃井・村田吉弘さんがご自身の経験や思い出を通してわかりやすく語ります。
菊乃井・村田吉弘の<和食世界遺産>和食のこころ 村田吉弘 著
撮影/小林庸浩
「家庭画報」2017年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。