骨粗しょう症薬は日進月歩。新薬の登場で選択肢が広がる
さらに詳しく知りたいのが、骨量減少や骨粗しょう症と判定されたときの対策です。
「骨量減少と判定された場合は、すぐに治療とはならず経過観察を行います。同時に食事、運動、日光浴に取り組みながら、これだけでは十分に補うことが難しいビタミンDや、骨量増加の効果が期待されるエストロゲン様作用のあるサプリメントを服用してもらいます」と平池先生は説明します。
すなわちこの段階では、骨量を維持することを目的とした日常生活の改善が行われます。
骨粗しょう症と判定された場合は治療の対象となり、薬物療法による骨量の回復を目指します。
「近年、この分野の治療薬は日進月歩で新薬が次々と登場しています。選択肢が広がったことで個々のライフステージと骨粗しょう症リスクに応じた治療戦略を考えられるようになりました(下図)」と平池先生。
ライフステージで考える骨粗しょう症の治療戦略東京大学医学部附属病院女性診療科・産科提供資料をもとに作成閉経前後の時期は骨量増加に高い効果が認められるホルモン補充療法を優先し、この適応でない場合は骨の減少程度に応じて、骨の破壊を阻止するSERM(選択的エストロゲン受容体作動薬)やビスホスホネート製剤、デノスマブ、骨をつくるテリパラチド、この両方の作用を持つ最新薬のイベニティなどを使い分けます。
治療期間は骨量の回復程度により人それぞれですが、数年以上かけて治療します。
「骨粗しょう症は日本人女性の健康寿命が短くなる要因として看過できない病気です。体のメンテナンスの1つとして50代からの骨量維持にぜひ取り組んでください。私たちもそのために必要なサポートをします」
Information
東京大学医学部附属病院
東京都文京区本郷7-3-1
東京大学医学部附属病院 骨粗鬆症センター 女性診療科・産科 〔主なスタッフ〕骨粗鬆症センター/センター長 齋藤 琢先生(整形外科・脊椎外科)、伊東伸朗先生(腎臓・内分泌内科)ほか15名、女性診療科・産科/能瀬さやか先生、金谷真由子先生ほか8名 〔主な連携先の診療科〕老年病科、アレルギー・リウマチ内科など 受診を希望する場合は、かかりつけ医などによる骨粗鬆症センター宛の紹介状と電話による予約が必要。整形外科・脊椎外科、女性診療科・産科、腎臓・内分泌内科のうち診療科を指定する場合は、その旨を紹介状に記入する。指定がない場合は、適切な診療科が対応する。受診の詳細については病院のHP「診療科・部門一覧/センターなど/骨粗鬆症センター」をご覧ください。 URL:
https://www.h.u-tokyo.ac.jp/patient/depts/op/ 〔費用〕保険診療(患者負担1~3割)
【参考情報】 ●骨粗しょう症の予防や治療に対応してくれる医師・病院を探したいとき 日本女性医学学会が認定する女性ヘルスケア医の資格を持つ産婦人科医は、閉経や月経不順に伴う卵巣機能低下による骨粗しょう症に対応してくれる可能性が高い。同学会のHPでは専門医の名簿を公開している。 日本女性医学学会「専門医・専門資格者一覧」 URL:
http://www.jmwh.jp/z-ninteisya.html ●更年期以降の健康維持について知りたいとき 厚生労働省の「女性の健康の包括的支援政策研究事業」の一環として制作されたHP「女性の健康推進室ヘルスケアラボ」では、ライフステージごとに女性の健康問題を解説しており参考になる。 厚生労働省研究班監修「女性の健康推進室ヘルスケアラボ」 URL:
http://w-health.jp/ 取材・文/渡辺千鶴 撮影/八田政玄
『家庭画報』2019年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。