今年はぜひお弁当を持ってお花見に出かけませんか。
四段重と酒器、取り皿などがワンセットになった提重。 長寿を祝う菊の蒔絵に桜の紋などが施され、四季を通じて使える。
重箱のお弁当にはいくつか決まりごとがあります。一の重には先付けや口取り肴を、二の重には焼物、三の重には炊いたもの。そして四の重にはご飯ものでお花見のときはたいていおすしですね。
「昔の人はこんなお重に料理を詰めて花見に出かけ、一首詠んだりしはったんやな」と村田さん。
本日は彩り鮮やかな手綱ずしと可愛らしい手まりずしにいたしました。 味つけもお店で供するよりは少し濃いめに、でもおせち料理よりは薄めに。その日のうちに召し上がっていただくという味加減です。材料はもちろん、この時季のものをたっぷりと。桜鯛とも呼ばれる旬の鯛はお花見の象徴。桜の葉をあしらってお造りやおすしに。たけのこも炊いたり、木の芽あえにしたりとふんだんに使います。何よりふたを開けたときに、春の息吹を感じていただけるよう、華やかに。花びらにしたゆり根やうどを散らして春爛漫、ちょっと芝居がかってかぶいたくらいがいいものです。
しばらくお弁当を持ってお花見に行ってないわというかたも、今年はお出かけになってはいかがでしょうか。神様が宿る桜と対峙し、日本人である喜びを感じてみるのもいいかもしれません。
村田吉弘/Yoshihiro Murata
料亭「菊乃井」3代目主人。
京都の本店と木屋町店、東京の赤坂店の3店舗を統括し、この春に京都の本店の隣に、お弁当と甘味を供する「サロン・ド・無碍」をオープン。日本料理アカデミー理事長ほか数々の要職を歴任し、「和食」のユネスコ無形文化遺産登録に尽力。和食を日本文化の重要な一つと考え、世界に発信するとともに、後世に伝え継ぐことをライフワークと考える。
和食文化の面白さ、奥深さがわかる一冊! 菊乃井・村田吉弘さんの人気連載が本になりました
菊乃井・村田吉弘の<和食世界遺産>和食のこころ 村田吉弘 著
撮影/小林庸浩
「家庭画報」2017年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。