お揚げさんに辛子…。初牛には狐さんの好物を。
京都のいなり寿司は具だくさん。おの実、柚子、ごま、ごぼう、京にんじんを入れて。
初午の日は食べるものが決まっています。いなり寿司に畑菜の辛子あえと粕汁。稲荷大社のおつかい、眷属である狐さんの好物やからお揚げさんを使うたいなり寿司と、これも狐の好物といわれる辛子を使った辛子あえをいただくもんやとか。初午の日はお揚げはお供えもしますね。畑菜は菜種に似ています。昭和三十年代は多く栽培されていましたが、今ではだいぶ作るお家が少なくなったそうです。
いなり寿司のすしめしには、おの実やごま、柚子に京にんじん、ごぼうを混ぜます。これもお家やお店によっても違いますが、京都のいなり寿司はおの実をよく入れますし、いずれにしても何かしら具を混ぜます。京都の料理屋は香りとテクスチャーを大切にしますから。東京でおいなりさんを食べたら酢めしだけでびっくりしました。なんや物足りなく感じて、僕はやっぱり具だくさんのおいなりさんのほうが好きやなぁ。形は三角形でこれもお狐さんの耳の形とか、稲荷山の形を模しているとかいいます。東京は俵形が多いようですね。
体のあたたまる野菜たっぷりの粕汁といなり寿司、畑菜の辛子あえは栄養面でも優れていると思いますし、昔はご馳走ですよね。旧暦の初午は今だとちょうど農耕の仕事始め、土おこしや種まきの時期にあたります。五穀豊穣を願ってご馳走を食べて初午を祝ったのではないでしょうか。