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菊乃井・村田吉弘【日本のこころ、和食のこころ】一月 大根とかぶら 

2017.01.01

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“あく”も旨みになる。


よく、ぶり大根は下世話な料理やから……というかたがおられますが、それは違います。鯛がぶりより上品てだれが決めたんや、と思いますね。もともとは神さまがお作りになった同じ自然界の産物。値段は人間が勝手に決めたものやし、上下があるようにいうんはおかしなことだと思うんです。それぞれのおいしさ、よさを引きだすんが、料理人の役目だと。ですから同じ煮物でも、鯛かぶらとぶり大根では作り方が違うものです。

鯛とかぶらは別々に炊いて後で盛り合わせます。これを炊き合わせといいます。ぶりと大根は一緒にことことと煮込みます。大根の辛味がぶりの生臭みを消し、ぶりのゼラチン質が大根のくせを和らげます。これは最初から一緒に煮込まんとあかんわけです。



ぶり大根を盛りつける村田さん。こういった料理は作為なく、ざんぐりと盛ることが肝要と。

そうそう、昔はあくをとりながら煮込む、とレシピにありましたが、最近はあくはとらんほうがええ、ということがわかってきました。京都大学の先生たちと調理の科学を実験したり、勉強したりしてますが、ぶりやさばを大根と煮た場合、あくをとりながら作ったものと、あくをとらずに作ったものとでは、あくをとらなかったほうがおいしかった。浮いてくるあくのなかには、魚の脂やたんぱく質がくっついていてこれが旨みになっているんですね。ですから、あくをとってしまうと、脂気のない旨みのないものになってしまいます。
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