2.カルティエ現代美術財団
緑いっぱいのカルティエ財団の庭の中の展示から、右は、映画監督の故アニエス・ヴァルダの「木の上のニニ」(2019)。©︎Thibaut Voisinモダンな建築と「木」のアートの融合
ラスパイユ大通りに、ジャン・ヌーヴェル作のガラス張りのファサードが日光を浴びている、「カルティエ現代美術財団」。現在開かれている企画展が、その名も「Nous les Arbres / Trees」(「私たち樹木」)展です。こちらも、この秋パリジャンたちに口コミで評判が広がっている、心に残る展覧会です。
1階の大きな空間いっぱいに並ぶ大作は、ブラジルの画家ルイス・ゼルビニの作品。©︎Luc Boeglyあらゆる「木」の美に触れる
企業のアートメセナ(芸術文化支援)のあり方を常に導いて来た財団ならではの、現代アートと環境の保全、科学をつないだ、画期的な展覧会なのですが、硬いことを考えずに足を踏み入れれば、それはもう、数多くの国のアーティストによる、ポエティックでスピリチュアルな、“木々”がいっぱい。様々な美しい木々の姿に心が安らぎ、木々と人間との関係について考えさせられ、木を見る目が変わること確実です。
地下の展示から、イランの画家マームード・カーンによる作品。「無題」(2019)。©︎Thibaut Voisin
以前から、アマゾンの先住民ヤノマミ族のアートを紹介して来たカルティエ財団ですが、本企画ではヤノマミ族だけでなく、パラグアイやブラジルの先住民による、木々と動物が生き生きと描かれた、ファンタジー溢れる作品から展覧会は始まります。
ファブリス・ディベールや、レイモン・ドパルドンなどフランスを代表するアーティストから見た、木と人間の関わりを考察する展示へと続きます。地下には、虫眼鏡で拡大して見られるようになっている、イタリア人建築家による樹木の緻密な縮小図や、パラグアイの森で撮ったビデオ作品など、とにかく、木、木、木。
庭の展示から、フランスの作家ファブリス・ディベールの「パラダイス」(2013)。庭園でのアート鑑賞も忘れずに
忘れてはならないのは、美術館の建物をぐるりと囲む庭です。普段から、野外コンサートが開かれたり、晴れた日にはカフェがオープンしたりする憩いの空間ですが、この期間中は庭にもたくさん作品が置かれ、庭の木たちと作品とが一体となって溶け合っています。中でも、今年亡くなった映画監督アニエス・ヴァルダによる愛猫へのオマージュ作品2点はお見逃しなく。
カルティエ現代美術財団の庭は、晴れた日の昼間にはカフェのスタンドも出る、憩いの場。歩いて2分の距離には、ジャコメッティ財団もあります。今回は詳しくご紹介しませんが、せっかくここまで来ているなら、こちらもぜひおすすめです。(ジャコメッティ財団は、
こちらの記事でご紹介しています)
Fondation Cartier pour l’art contemporain
261 Boulevard Raspail, 75014 Paris
電話 +33 (0)1 42 18 56 67
開館時間 11時~20時(火曜~22時)
閉館日 月曜
入館料 10€50
https://www.fondationcartier.com/en/※「Nous les Arbres / Trees」(「私たち樹木」)は2019年11月10日(日)まで。