3.ザッキン美術館
木々の茂る庭に、ザッキンの彫刻がそこここに立つ、ザッキン美術館。素朴なアトリエに憩い、アートを愛でる
最後にご紹介するのは、モンパルナスの黄金時代に活躍した、ロシア出身の彫刻家で画家である、オシップ・ザッキンのアトリエを元とした、「ザッキン美術館」です。エコール・ド・パリを代表するアーティストだったザッキンが、1928年から67年まで暮らし、アトリエにしていた邸宅が、ザッキンと夫人の死後、パリ市に遺贈されました。以来、静かな袋小路の奥にひっそりとある、緑豊かな庭に囲まれた白い壁の家が、ザッキン美術館として公開されています。
ザッキンが暮らし、工房を持っていた白い家が、美術館となっている。この秋の企画展は「森」がテーマ
9月27日(金)から2020年2月までの企画展は、「Le rêveur de la forêt」(森の夢想家)と名付けられ、ザッキンを含めた40人のアーティストの作品から、「森」をテーマに集められました。ザッキンの作品は、木の枝をそのまま使ってその形からインスピレーションを得て作られたものなど、一つとして同じ形のないものばかりです。
ザッキン作「ぶどうの収穫」(1918)。ピカソやロダン。近代美術の名品も楽しみに
カルティエ財団の「木」の企画展と、この「森」展とは、共通するものがあります。人間と植物が融合をテーマにした美術展は、パリという都市の中で、美しい緑の庭の残るモンパルナスだからこそ、生きてくるのです。現代美術作品だけで掘り下げたカルティエ財団に対して、ザッキン美術館の方は、こじんまりはしていますが、ザッキンの他にも、ピカソや、ロダン、ブランクーシ、ゴーギャン、ジャコメッティ、ヴラマンクら、近代美術の巨匠たちの作品に出合えるのも魅力です。
マックス・エルンスト「最後の森」(1960−70)。ザッキン美術館のあとは、秋のリュクサンブール公園にそのまま散策を続けるもよいですし、ヴァヴァンの交差点まで戻って、ラ・クーポール、ラ・ロトンド、ル・セレクトなど、芸術家たちが集った往年の賑わいの面影を残す、モンパルナスのカフェを楽しむもよいでしょう。
Musée Zadkine
100 bis, rue d’Assas, 75006 Paris
電話 +33 (0)1 55 42 77 20
開館時間 10時~18時
閉館日 月曜、12月25日、1月1日
入館料 8€
(カルティエ現代美術財団の「Nous les arbres」展のチケットを持っていれば6€)
http://www.zadkine.paris.fr/※「Le rêveur de la forêt」(森の夢想家)は2019年9月27日(金)から2020年2月23日(日)まで。
大島 泉/Izumi FILY-OSHIMA
ライター、コーディネーター、通訳、翻訳者
東京生まれ、東京育ち。1989年にパリへ移住。現在はパリ郊外、サンジェルマン・アンレイ暮らし。