果てがない宇宙は究極の自由のようなもの
「僕はよく、自分で限界を決めるなという意味で『限界は宇宙の果てにある』といいます」と松岡さん。スーツ、シャツ、ベルト/紳士服コナカ松岡 最後に、先生が考える「宇宙とは何か」を、僕らもわかるように説明していただけませんか。
中須賀 うーん、難しい質問ですね。まず技術的な話をすると、宇宙は特別なところではないんです。水中などと同じで環境の一つにすぎません。どんなものかを知ってしまえば、対応できるシステムは作れます。
松岡 なるほど。知らないから特別に思えるわけですね。
中須賀 ただ、人間に与える影響はすごく大きい。僕は「宇宙は果てがない」という感覚を持つことがとても大事だと思っているんです。果てがないということは、どこまでも行けるし、どんなものを造ってもいい。宇宙とは、究極の自由のようなものだと思っています。
松岡 今の言葉に勇気をいただきました。なぜなら、僕は宇宙でいいんだ、今のまま自由な考え方をしていていいんだ、と思えたからです。宇宙感覚があれば、どこまでも世界は広げられますね。
中須賀 そのとおりです。僕は逆に、自分はまだまだ宇宙的ではないと思っています。いろんなことに縛られてしまって......。宇宙をやっている僕がもっと宇宙にならなきゃいけないと思ったりするわけです。自由な考え方ができるようになったら、宇宙人になれると思うんですが。
松岡 宇宙人ですか!(笑)
中須賀 人間はみんな宇宙人ですから。今回のようなプロジェクトにどんどん挑戦することで、自分の殻を破って、僕も松岡さんみたいにもっと自由になりたいです。
松岡 はい、僕は宇宙を目指します。ガンダムが宇宙に飛び出す来年の春が、今から待ち遠しいです!
修造エール
中須賀先生のお話は感嘆することの連続でしたが、宇宙遊泳の話もその1つです。先生は真剣に宇宙遊泳をしたいと考えられています。無重力状態はジェット機で何度も体験されているため今はもう関心がなく、とにかく宇宙空間に出たいのだそう。
「宇宙服の中の純酸素を吸いながら、暗闇に浮かぶ地球を見たいんです。音のないゼロデシベルの状態に置かれた自分が何を考えるかという興味もすごくあります」と目を輝かせて話される先生は本当に楽しそうで、ちょっとうらやましくなりました。
先生によると、人間は常に新しい世界を求めることで進化していく存在なのだそう。色紙の「宇宙しよう」は「未知のこと、新しい世界に挑戦しよう」という呼びかけです。先生、僕らも宇宙します!
松岡 修造 SHUZO MATSUOKA
1967年東京都生まれ。86年にプロテニス選手に。95年ウィンブルドンでベスト8入りを果たすなど世界で活躍。現在は日本テニス協会理事兼強化本部副本部長として、ジュニア選手の育成とテニス界の発展に尽力する一方、テレビ朝日『報道ステーション』、同『TOKYO応援宣言』、フジテレビ『くいしん坊!万才』などに出演中。近著に『弱さをさらけだす勇気』。2019年8月2日、東京2020オリンピック日本代表選手団公式応援団長に就任。
公式サイト>>撮影/鍋島徳恭 スタイリング/中原正登〈FOURTEEN〉(松岡さん) ヘア&メイク/井草真理子〈APREA〉(松岡さん) 取材・文/清水千佳子 撮影協力/東京大学
『家庭画報』2019年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。