長年のコーディネート経験を重ねて横瀬さんが極めたのは、ヨーロッパのエスプリとアジアの洗練をミックスさせたスタイル。晩秋の昼下がり、気の置けない友人とお茶を
今日はお茶の時間に友人をお迎え。玄関から縦長のリビングダイニングに入ると、まず目に飛び込んでくるのが、窓際の大きなテーブルにコーディネートされた、お茶のセット。お客さまの気持ちがここで一気に「これからここでゆっくりお茶をいただく」期待感にあふれます。
「前回もトレー使いをご紹介しましたが、今回もトレーがひとつのポイントになります。テーブルの上に置いたのは、内田鋼一さんの作品。ひときわ高いトレーの上に、大ぶりのポットとカップを置くことで、そこにスポットライトがあたるような感じ……とでも言いましょうか。ゲストの気持ちも、お茶にフォーカスされますよね」
ティーセットを引き立てるのは、内田鋼一さんのお膳。「床に置いて使われる方が多いと思いますが、私はあえて卓上に」。高さを出すことで、存在感が増す。トレーの上も、まさに横瀬イズムいっぱいのセッティング
「ティーポットは、私のコーディネートにも頻繁に登場するアイテムです。高さもあり、存在感もあるので、ポイントやアクセントを作りやすい。テーブルの印象を決めてもくれる。クラシックからモダンまで、実はかなりの数のポットを持っている“ポットおたく”でもあるのですが(笑)、見たことのない形のポットに出会ってしまうとついつい買ってしまいます。この三角お屋根も、モダンで目を引くでしょう?」。
シルバープレイティッドのポットとティーキャディは、旅行先のロンドンで、イーストインディアで見つけたもの。カップはロイヤル コペンハーゲンの「藍色よりもアジアンテイストに合わせやすい」茶色柄の新作を。新旧の器を内田さんのトレーがまとめる、まさに横瀬さんらしい「ミックス」スタイルです。
お客さまがいらっしゃる前に、ティーセットはあらかじめセッティングして、全体をチェック。ホスト側の心の余裕も生まれる。テーブルを作ったら、空間の“景色”を作る
季節の演出は、クロスと花で。「空間のなかでも大きな面積を占めるテーブルクロスは、その場の雰囲気をガラッと変えてくれる大切なアイテム。
夏の頃には、明るめの元気カラーやさわやかカラーのクロスで愉しんでいましたが、秋にふさわしいのは、このような深い色。もともと明るいより暗い、派手よりもシックが好みなので、地味にならないよう、シルバーやお花などで華やかさをプラスするようにしています」。
花は1か所ではなく、2つ“対”で考えることが多いとか。「そのほうがテーブルの上でバランスをとりやすいんです」
セッティングをするときにいつも心がけているのは「ひとつの景色を作る」こと。テーブルの上のコーディネートから空間に、大らかにイメージを広げていきます。
「テーブル上のことだけ考えていると、段々とちまちまとした思考にはまっていきがちですので(笑)、そんなときはテーブルから3歩下がって全体を見たり、大胆にアーティストになった目線を持つようにしています」。
ざっくりと大きく活けたわれもこうを、テーブルから少し離れたところに置くことで、空間にも奥行きが生まれました。
「でも一番大切なのは、自分自身も含めて、お客さまに楽しんでいただこうという“気持ち”。自分らしさを見つけながら、コーディネートを楽しんでくださいね」
今回は秋らしく、われもこうを大胆に活けて。花材や花器は、東京・青山の「FUGA」で探すことが多いとか。「自分らしい」スタイリングを作る「横瀬流ルール」とは?
「自分らしさ」はまさに百人百様。個性や嗜好、経験やインスピレーションなどが重なり、溶け合って、自分らしいスタイリングが誕生します。
長年、インテリアコーディネーターとして活躍されている横瀬さんが極めた「自分らしさ」はどこで生まれるのでしょうか。横瀬さんの3つのルールをご紹介します。
(1) ミックススタイルのコーディネート和と洋、古いものと新しいものなど、テイストの異なるものを合わせる。
(2) 家族の記憶をちりばめるたとえばお母さまから譲られた食器や、旅先で見つけたアイテムをあしらう。
(3) 季節感を大切に花材はもちろん、暦や行事から発想した色や形も生かして。
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『家庭画報』をはじめとする女性誌で活躍する、インテリアスタイリストの横瀬多美保さん。1年間にわたり、ご自身の1LDKでの暮らしを綴った『家庭画報.com』の人気連載が、ついに一冊の本になりました。コーディネートの組み立て方、“自分らしい”空間の作り方も初公開。今すぐに活用できる暮らしのtipsが満載です。