和の粋を集結した和風別館“游心亭”
本館の東側に佇む「游心亭」の正面入り口。切妻屋根の中門左脇にある外灯には、桐のご紋章がついている。旧東宮御所であった赤坂離宮は、戦後に皇室から国に移管され、日本と国際社会との関係が活発化する中で、1974年に迎賓館となります。その際に行われた大改修の一つが、和風別館「游心亭」の新設でした。
梅や桜の木々が植えられた日本庭園を望む47畳の「主和室」。テーブルは床下に収納でき、全面を畳敷きにすることが可能。4畳半の畳席以外は絨毯が敷かれた「茶室」。賓客は椅子に腰掛けて点前を見たり、茶を喫することができる。主に和食での食事会を行う「主和室」、天ぷらやおすしなどをカウンターで楽しめる「即席料理室」、「茶室」で構成された建物は、和風モダニズム建築の名手、谷口吉郎が設計。
この凜とした和の空間で、鯉の餌やりや、茶道や華道などの日本文化を楽しげに体験する各国要人の様子がその時々に報道され、記憶に残っているかたも多いのではないでしょうか。
鮮やかな錦鯉が泳ぐ「游心亭」南側の池。西洋様式の本館での行事や接遇が洋式であるのに対し、「游心亭」は日本の意匠とおもてなしで、賓客をお迎えする目的で作られました。
渡り廊の右手に広がる坪庭。京都の白川砂が敷き詰められ、風に揺れる孟宗竹や貴船石が和の風趣を添えている。日本各地の特徴ある石材や美しい木材が用いられ、職人の精緻な手仕事が光る、まさに和の粋が結集された空間です。
庭園や照明、調度品に至るまで、自然と融和しながら文化を育んできた日本の美意識が生かされた「游心亭」は、訪れた人を清らかな気持ちへと誘います。
Information
迎賓館赤坂離宮 参観のご案内
東京都港区元赤坂2-1-1
- 参観日、休館日、参観料金は変更の可能性があります。 詳細は公式ホームページへ。
表示価格はすべて税込みです。
撮影/小林廉宜 阿部 浩 坂本正行(世界文化社) 取材・文/鈴木博美
(宇崎竜童さん、阿木燿子さん)ショール、バッグ/エトロ(エトロジャパン) 指輪、ピアス、ブレスレット、ネックレス/アジュテ ア ケイ(京屋)
『家庭画報』2019年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。