患者は圧倒的に女性が多く50代以降に増えてくる
2002年、全国に先駆けて「ドライマウス外来」を開設した栃木医療センターは、ドライマウスの診療では全国有数の実績を誇ります。
現在も栃木県内を中心に受診する患者が絶えず、その中には、「年のせい」「気のせい」といわれ、各地の医療機関を転々としてきた人も少なくないといいます。
ドライマウスは、さまざまな原因によって口が乾く病気で、医学的には「口腔乾燥症」と呼ばれます。
患者は圧倒的に女性が多く、50代以降で罹患する人が増えてきます。
「症状として重要なのは唾液量が減少することで、初期には口の中が乾いたり、ネバネバしたりしますが、異常として認識されにくいため、舌の痛みやざらつき感などを感じるようになってから受診する人が多いです」と同外来を担当する岩渕博史先生は説明します。
唾液量が減少する原因は大きく2つに分類され、1つは唾液がつくれなくなること、もう1つは体内の水分が減ることです。
「唾液がつくれなくなるのは唾液腺の機能が低下しているためで、原因の1つは加齢現象です。ただし、80歳近くにならないと唾液腺の機能は低下してこないので、高齢でない場合はほかの原因の可能性が高いです」。
最も多いのは、薬の副作用によるもので、高血圧の薬、精神安定剤、頻尿の薬、アレルギーの薬などは唾液の分泌を抑制することがよく知られています。
「炎症や腫瘍による唾液腺の障害、極度のストレスや更年期障害、がんの放射線治療や抗がん剤治療が原因のこともあります。さらに原因疾患で多いのは自己免疫疾患の1つであるシェーグレン症候群です。当外来を受診された人の約半数にこの病気が見つかっています」。
一方、体内の水分が減るのは、ほかの病気や治療によることが多く、糖尿病や尿崩症、透析治療、利尿剤の常用などは体内から水分を排出する原因となります。