自分の中にはない、麟太郎の記憶をどのように埋めるか
通夜振る舞いとして出される料理で麟太郎が思い出す父や家族とのエピソードも劇中では描かれています。ただし、少年時代を演じているのは、牧 純矢さんと外川 燎さんで、実際のところ染谷さんの中に麟太郎の記憶はありません。
「過去パートの撮影が始まる前に、過去と現在のキャストが揃って本読みをしたんです。それでお互いの温度感を確認しあいました。そのあと、(現代パートより先に撮影された)過去パートの軽く編集してある映像を観せていただいて。過去と現在を行ったり来たりする架け橋になるようなシーンだったり、ここはつなげて観せたいというカットだったり。そういうのは観させてもらいましたけど、それぐらいですね。台本に書いてあることをやれば大丈夫だろうと思っていたので」
もう一つ、染谷さんにはない麟太郎の記憶が。劇中でも描かれていない、少年時代から現在までの15年間です。
「麟太郎は、少年時代はわりと少年らしいというか、明るい感じなんですよ。でも、15年たつと若干やさぐれてて(笑)。そこの変化を意図的に描いていないので、自分がうまく埋めなきゃと思いました。なぜ彼がやさぐれているのかっていうのも、この映画のキーといいますか。そうだからこそ動いていく物語でもあると思いますし。ただ明るいだけではない大人になって、根はいい人なんだろうけど、何か漏れ出てしまっているみたいなところはすごく気をつけました。あ、別に監督がやさぐれてる人っていうわけではないです(笑)」
空白の15年も、監督を観察することで埋めたという染谷さん。その上で、「15年もあればいろいろあるよねというつもりでやりました」。