——自身の脚本で撮るのと、別の人の脚本で撮るのは違いますか?
「まったく違いますね。脚本家は、セリフを書いてくるんです。1か月かけて1行のセリフを一生懸命考えて書いて、ストーリーを構成していくのが脚本家の仕事だとすれば、できるだけセリフを削って表情とかアクションとか、動きで見せたいと思うのが映画の現場。僕はずっと現場側でやってきたんですけど、今回は自分で書いたものを自分で削るわけですよ。だから、現場では右半分と左半分がバラバラな感じがしましたね」
——稿を重ねても譲れない部分ももちろんあったと思いますが……。
「原作はチュウさんが全体を案内してるような役だったんです。それを映画にするときは、秀丸さんと由紀を真ん中において、それにチュウさんが絡むという、原作と違った構成にしていて。でも、原作の持ってる核というかコアというか、それだけははずしちゃいけないなっていうふうに意識していました。帚木さんからは、もともと『休鳥たちの杜』というサブタイトル
※だったと聞いています。だから、精神科病棟にいてもそれは次に行くための場所で。その思いだけはちゃんと残したいなと思っていました。今までの映画でもたいてい残しているつもりです。それがうまくいっているときといっていないときがあるかもしれません(笑)」
——うまくいくときといかないときの差は、どこにあるんでしょう?
「なんなんですかね。モザイクがピタッとハマるときはうまくいったと思うし、“あ、はみ出したな”みたいなこともあるし。これは、やってみないとわからないですね」
——今作のモザイクはピタッとハマりましたか?
「まだ客観的に観られないんですよ、正直。今でも、あのカットとあそこのカットを入れ替えたほうがいいかなとかって思うくらい、非常に女々しい。判断してくれるのは、観てくださった人だと思いますね。映画って観てもらってなんぼなので。そのときに褒められたらうれしいし、けなされれば悔しいしっていうことの繰り返しですね」
院内シーンは、国立の精神科専門医療施設で撮影。ドキュメンタリー以外で、精神科病棟を舞台とする映画を撮影するのは本作が初。※映画公式サイトの帚木さんのコメントでは、当初のタイトル。