――山崎さんは泥棒という難しい役を演じきりました。
山崎:役柄に落とし込めるわけもなくて。なんせ、泥棒ですからね(笑)。もちろん、人の家に忍び込んだことはないですけど、修一を「身一つで生きてきた職人気質の男」と捉えれば、音楽で生きてきた自分と、そこまで変わらないのかなと思えました。そして、他の人には理解してもらいにくいけど、自分が大事にしているところをどうしても捨てられなくて、先へ踏み出せない。そういう部分は僕にもあるし、人間誰しもあることかな、と。
――啓二にも“ある事情”があって、演じるのは難しかったのではないでしょうか。
北村:ネタバレになってしまうので、詳しくは言えないんですけど、いろいろな“事情”があって、ものすごく細かい部分までかなり意識して演じました。
常に「修兄ぃ」の後をついて行くという設定だったので、撮影中ずっと、まさよしさんの背中を見ていて安心感があったし、まさよしさんが醸し出す空気に飛び込むことで、僕の演技も広がったと思います。胸をお借りしました!
山崎:僕のほうこそ、匠海くんが作ってくれる空気に乗っからせていただいた感じで、すごく助かりました。いつも啓二から話しかけてくれるしね?
北村:そうなんです。でも、啓二が修兄ぃの前に立つことって一度もないんです。兄と弟という関係もあるし……。
山崎:そこから先は言えないよね。でも、匠海君との呼吸はすんなり合って、芝居をしていてすごく居心地がよかったです。
――北村さんは、啓二という役をどう捉えましたか?
北村:啓二は金髪やチャラチャラした服を着ることで反発心を表現していたけど、僕は気持ちを外見的なことで表現するっていうのはできないタイプなんです。啓二には修兄ぃを慕う気持ちと、反発する気持ちが混在していて、その葛藤を理解するのに時間がかかりました。この作品は、表面上はミステリーなんだけど、実は極上のヒューマンドラマだと思います。
群馬県内でオールロケだった本作。「群馬は古いものと新しいものがいい具合に混在しているところ。こんなところで子供を育てたら健やかに育つだろうなと思いました」