Q3.どんなリスクがありますか?
A3.乳がんのリスクは5年未満の使用なら増える心配はありません。
HRTは乳がんになりやすいと聞いたことはありませんか。
HRTが乳がんのリスクを高めるというWomen's Health Initiativeの研究発表が大々的に報道されたことから、現在も乳がんのリスクを心配する人が少なくありません。
「後の研究からHRTが原因とされる乳がんリスクは非常に小さいことが判明し、そのリスクは一般的な乳がんリスク因子と同等かそれよりも低いものです(下表参照)。
乳がん発症のリスクとして考えられている主な因子
『乳癌診療ガイドライン②疫学・診断編 2015年版』日本乳癌学会編を参考に作成それゆえ、HRTの5年未満の使用であれば乳がんのリスクは増加しないことがグローバルコンセンサスとなっています」と小川先生は説明します。
そして「乳がんになる日本人女性は増えているので、HRTを行っているかどうかにかかわらず、定期的に乳がん検診を受けることが大切です」とアドバイスします。
むしろHRTを長期的に行う際に注意したいリスクは血栓症、脳卒中、心筋梗塞です。
「大きな問題となるものではありませんが、治療中は定期的に検診や人間ドックを受け、主治医と個々のリスクを確認しながら続けましょう」。
また、HRT開始直後にはエストロゲンの影響で不規則な出血や乳房・腹部の張りなどが起こることがありますが、やがて消失したり薬の種類や量を変えることで治まったりします。
HRTのリスク
開始直後に起こることがあるトラブル●不正出血
●乳房の張り、痛み
●腹部の張り
●むくみ など
長期的な使用によって起こることがあるトラブル●血栓症...肥満の人や高齢者に起きやすい
●脳卒中...高血圧の人やHRTのエストロゲン量が多い人に起きやすい
●心筋梗塞...60歳未満、閉経後10年以内のHRT開始の場合は増加なし
●乳がん...5年未満のHRT併用療法では増加しない5年以上のリスク上昇もわずか