「新しい文化を創出するためには変化を恐れないことが大切です」——服部真二さん
服部真二さん(セイコーホールディングス代表取締役会長兼グループCEO)時代の1歩先を見据える曽祖父譲りの眼力と行動力を感じさせる服部さんですが、銀座にまつわる思い出やお気に入りの店について伺うと、スポーツや音楽を愛する気さくな素顔が見えてきます。
「子どもの頃はよく親に連れられて行った『不二家』で、エクレアやクリームソーダを食べるのが楽しみでした。大学は慶應だったので、6大学野球で優勝すると、神宮から三田までの提灯行列に参加し、続いて銀座のビアホール『ライオン』に繰り出すんです。
私自身は学生時代はテニスやスキーをしていて野球はしていませんが、卒業後も何度か行きました。何千人もが練り歩くから、車も全部ストップする。今考えるとすごいことをやってたなと思います(笑)。
最近よく行くのは、コリドー街のライブハウス『ケネディハウス銀座』。私は昔から加山雄三さんのファンで、加山さんが年4回出演するんですよ。私もステージに立ったことがあって。あそこは楽しくて、行くと今でもちょっとドキドキしますね」
数寄屋橋交差点を見下ろす。左手前は服部さんが子どもの頃よく行った「不二家」。右奥が銀座4丁目交差点。かつては六大学野球で慶應義塾大学が優勝すると、道路まで大勢の学生で溢れ返り、車も通れないほどだったとか。加山雄三&ハイパーランチャーズが定期ライブを行うため、服部さんも足繁く通う「ケネディハウス銀座」。平成から令和へ——
その瞬間を鮮やかに演出したショーウインドウ
和光本館では、平成31年4月1日の新元号発表直後に書家の石飛博光さんが館内で書いた「令和」の書をショーウインドウに掲示。中央のブルーの円は、空を映す時計塔の時計をイメージしたもの。和光本館では、平成から令和に切り替わるタイミングに合わせて、特別なウインドウディスプレイがお目見えしました。
まず平成31年4月1日には、新元号が発表された直後に書家が揮毫した「令和」の書を即ショーウインドウに掲示(上写真)。
さらに令和元年5月1日午前零時には、時計塔の鐘の音とともに、新元号を寿ぐ新たなディスプレイを披露したのです(下写真)。
令和元年5月1日午前0時には、時計塔の鐘の音とともにシャッターが開き、鳩や梅をあしらった特別なウインドウディスプレイが登場。新時代の幕開けを祝う粋な演出を街の人々が見守った。ショーウインドウもまた道行く人々に時を告げる場
服部さんいわく、「あの瞬間は1つの時代の幕切れであり、時代の幕開けでもあって、非常に重要な意味がありました。セイコーは時を扱う事業を行っていますので、ここから街の皆さんに新しい時代を告知するのも1つの役割だと考えたのです」。
4月1日の号外の裏面には、最高レベルの性能と洗練されたデザインが世界中から高い評価を受ける「グランドセイコー」の全面広告も掲載。新元号発表の感動を鮮やかに演出しました。
外国人が増える一方で、いまだに親子や3世代で訪れる昔ながらのお客さまも多い、古さと新しさが入り交じった街・銀座。
最後に、世界中の人々が訪れる2020年に向け、銀座の魅力を発信していくには何が大切かと問うと、こんな答えが返ってきました。
「銀座にもセイコーにも共通していますが、やはり伝統は尊重しつつも、常に革新的なものを取り入れ、進化していくことが必要でしょうね。変化を恐れないこと。それが新しい文化を作り出すことにつながるのではないでしょうか」
撮影/大見謝星斗、本誌・武蔵俊介 取材・文/大山直美、清水井朋子
『家庭画報』2019年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。