自宅(家や住んでいる施設)で受ける医療
訪問診療と往診はどう違う?——
医師が定期的に訪問して、計画的に健康管理を行うのが訪問診療
住んでいる家や施設での医療的ケアを指す「在宅医療」のうち、医師の診療には往診と訪問診療があります。
「病院に行けないほど具合が悪い、あるいはもともと障害などがあって動けない人が具合が悪くなったというときに医師が家や施設に診察に赴くのが往診です。ただ、具合が悪いときだけの往診だと予防的なケアや病気への早期の対応が難しい。
そこで体が脆弱な高齢者などを対象に、定期的に医師が訪問して、計画的、継続的、包括的に健康を管理し、病院での治療や介護サービスにつなげるのが訪問診療です」(佐々木さん)。
訪問診療は月1回か2回が標準的で、「がんの末期などで症状が変わりやすい患者さんのところには2日に1回くらい行くこともあります」。
また、訪問診療を行う医療機関は24時間連絡が取れる体制になっていて、必要に応じて往診したり、電話でアドバイスしたりします。
健康保険制度における訪問診療の診療報酬は1回の訪問が8330円で、支払いは患者の健康保険の種類によって、この金額の1~3割の負担になります。
また訪問診療のための計画書を1か月から半年ごとに作成する費用もかかります。
訪問診療が可能な範囲はおおむね半径16キロ以内とされ、交通費は患者に請求してよいことになっていますが、「多くの診療所は請求していないようです」。
高齢化の状況と国の対策
その歴史は?——
病院で亡くなる人が増え、高齢者人口の増加と病床の不足で自宅での医療提供の重要性が増した
1976年医療機関で亡くなる人の割合が自宅で亡くなる人の割合を上回る(1950年代は約8割が自宅で亡くなっていた。現在は1割強)。
1992年第二次医療法改正。自宅が医療提供の場として位置づけられる。
1994年健康保険法の改正において在宅医療が「療養の給付」と位置づけられる。
1998年診療報酬改定で「寝たきり老人在宅総合診療料」および「24時間連携体制加算」が新設される。
2000年介護保険制度始まる。
2006年診療報酬改定で「在宅療養支援診療所」が診療報酬上の制度として整備される。
2014年医療と介護を同格にし、地域包括ケアシステムを構築することを定めた医療介護総合確保推進法施行。
(以下、統計による見込み)
2025年65歳以上の高齢者が3人に1人の割合になり、5.5人に1人は75歳以上の後期高齢者に。
2042年65歳以上の高齢者人口が約3900万人になり、ピークを迎える。
2060年日本の高齢化率は約40パーセントになる。国民の7人に1人(高齢者の34.3パーセント)が認知症になる(認知症の人と子どもの人口比がほぼ同じに)。