大学病院としては日本初の甲状腺センターを開設
2019年4月、昭和大学横浜市北部病院は、約5年の準備期間を経て甲状腺疾患に特化した「甲状腺センター」を開設しました。これは、大学病院としては日本初の取り組みです。
専門チーム(甲状腺外科医、甲状腺内科医、病理診断医、臨床検査技師)が、耳鼻咽喉科、放射線科、眼科、産婦人科などの関連科と緊密に連携しながら治療を行う診療体制を構築し、あらゆる甲状腺疾患にワンストップで対応できるようになりました。
甲状腺は、首の喉仏の下にある器官で、脳の下垂体からの指令を受けて体の新陳代謝を促す甲状腺ホルモンを分泌しています。
甲状腺の病気として一般に知られているのはホルモンの分泌異常です。
ホルモンが不足すると甲状腺機能低下症になり、むくみやだるさ、意欲・気力の低下、皮膚の乾燥などの症状が現れます。この代表的な病気が橋本病です。
一方、ホルモンの分泌が過剰になると甲状腺機能亢進症になり、動悸、息切れ、多汗、手のふるえ、疲労、イライラなどの症状が出現します。
この代表的な病気がバセドウ病です。このほか甲状腺腫瘍や甲状腺炎などいろいろな病気があります。
「甲状腺の病気は内科と外科の両面からの治療アプローチが必要です。当センターでは、診療科の枠を超えたチームづくりにより総合的かつ専門性の高い集学的治療を提供しています。
また、この基盤があるからこそ、“ここで受け入れられない患者はいない”というスタンスで診療に臨んでいます」と甲状腺センター長の福成信博先生は説明します。
その言葉どおり、専門病院やほかの大学病院で対応しきれないハイリスク患者を積極的に受け入れ、“最後の砦”としての役割を果たしています。
同時に「首が腫れている」、「喉に違和感がある」といった初期症状の診療にも取り組みます。「喉の違和感を訴える人のうち九割はストレスが原因です。
しかし、1割は何らかの病気によるもので、甲状腺がんや食道がんなどが隠れていることもあります。こうした重い病気を見逃さないよう診断力の向上にも努めています」。