――確かに、開演前に手渡したカードを読み上げてもらったり、その場で頼んだ簡単な役割を演じてもらうことで、その日の観客が共演者となって一緒に作品をつくっていく……という画期的なスタイルの本作品。内容もとてもチャーミングで、観客にとっても忘れられない体験になりそうです。
「そう、チャーミングなんです! この作品をアメリカで上演していると聞いて、翻訳・演出の谷 賢一さんと一緒に観に行ったんですけれども、作品の可愛らしくてチャーミングな一面が実際に劇場で観るとより浮き彫りになって、素晴らしくいとおしい作品になっていて。切なくもありつつ、観た人に何かしら力をくれる作品だなと実感しました」
――ユタ州まで行かれたとか?
「はい、9月にユタ州南部にあるシーダーシティという町で観てきました。ほぼ1日かけて観に行ったワクワク感もあったかもしれませんが、とにかく素晴らしくて、久しぶりにあんなに興奮しましたね。“観てよかったな”と思う芝居はいくつもあるけど、これは本当に“自分の人生にとって豊かな出合いになったな”と思えた作品。もちろん、俳優さんの演技力や人間的な魅力もあってこそですけど」
来年2月27日には満40歳になる。「早かったですね。もう40歳なんて、自分でもびっくり(笑)」――どんな印象を受けたのでしょう?
「メリハリを多少つけながらも落ち着いて淡々と語って、お客さんに想像してもらう余地をつくりながら進めていくのかなという僕の想像に反して、アメリカの俳優さんは見事に喜怒哀楽を表現されていました。そこまでやるからこそ、お客さんの心を一気に物語に引き込めるのかなと思いましたね。開場したときから客席にいて、番号付きの小さなカードをにこやかにお客さんに渡していくんですけど、開演直前にものすごく真剣な顔で客席を見ながら、スタッフさんと打ち合わせしていた姿もカッコよくて。たぶん、どのお客さんに何をしてもらうか、確認していたんだと思います」
――佐藤さんも何かしら参加できたのですか?
「はい、僕もカードを渡されて、簡単な単語をひとこと読み上げました。そのせいもあるのか、これまで観たどんなお芝居よりも一体感があって、感動的でしたね。終わったときに湧き起こった拍手がすごく温かくて、しかもそれは俳優だけじゃなく、カードを読み上げてくれた人、役を演じてくれた人、それを見守ってくれた人……すべてのお客さんに対しても送られる。まさにみんなでつくり上げた素晴らしい時間で、観に行ってよかった!と純粋に思いました」