『開高健のパリ』
開高 健 著/集英社 2000円「若きの日に旅をせずば、老いての日に何をか語る」。このことばをたびたび揮毫したように、旅する作家として知られ、自身の異国体験を作品化してきた開高 健。
本書は少年時代から日本脱出を望んでいた作家が初めて訪問して以来、特別な場所として再訪を重ねたパリをめぐるエッセイと、画家ユトリロについての評論と解説からなる画文集。
“人嫌い”という点では共通しつつ、人から離れられない作家が画家の絵を語るときの鋭利な視点、その健啖ぶりがうかがえるムール貝やエスカルゴ、白ぶどう酒と焼栗を描写する文章、1961年8月、サルトルとの面会を目的としたパリ滞在時の様子を記したエッセイなどから、当時の気配が伝わってくる。
表示価格はすべて税抜きです。
『家庭画報』2019年12月号掲載。
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