【描く】
卓上はキャンバス。色と形で描く視覚の美
リビングに面し、三方を回廊で囲まれた中庭は、人の目を自然に引きつける格好のステージ。今日は高さ2メートル以上もある木のオブジェをフォーカルポイントに、小テーブルをさりげなく配置しました。屋内外をつないで広がる遊びの場があるだけで、おもてなしの楽しみ方や可能性が広がります。おもてなしとは“思ってもみないことを成し遂げること”だと話すコシノジュンコさん。
「おつきあいする人は私にとって宝物。その関係を大切にするためにも、時には自宅にお招きして、心を打つような感動体験を共有することが大事じゃないかしら」。ファッションショーのように物語性があり、驚きや共感を呼ぶ山場があるのが、コシノさんのおもてなしの流儀なのです。
この日のメインテーマは「対極の美」。モダンなリビングにはしだれ柳の枝を、そして中庭にはプリミティブな木製のオブジェをそれぞれ配置。
コシノさんが復興支援にもかかわっている、福島のつる細工職人が作り上げたビスチェとスカートは、コシノさんがデザインしたもの。つるを採るところから仕上げまで、1人の職人が丹誠込めて作りました。無機質な空間との対比が面白い。無機質な空間に有機的な存在が与える温もり、その対比が心に響きます。器づかいでも四角と丸、光るものと光らないもの、直線と曲線など正反対のアイテムを組み合わせ、新鮮な印象を。
「その際、骨董と現代の器を合わせるなど、あえて不揃いを楽しみます。テーマカラーを決めておき配色を整理しておけば、違うものでも共鳴し合って新しい美しさが生まれます」。
組み合わせ次第で形を変える会津塗の盆に、コシノさんがプロデュースした花札デザインの羊羹を置いて。食材と器の色を揃えると、美しさが際立ちます。ミャンマーでオーダーした椀は、竹に馬毛を巻き、内に金の漆を手塗りしたもの。同じ器を複数並べることで端正な美しさが生まれます。有田焼の長皿に丸と四角の豆皿を交互に置き、スイーツをのせて。こんなところにも対極の美が。