千住真理子(せんじゅ まりこ)
東京都出身。2 歳よりヴァイオリンを習い始め、1975年に12歳でプロデビュー。リサイタルや国内外の一流オーケストラとの共演などのほか、独自のボランティア活動も続けている。「音楽は演奏したそばから音が消えていく瞬間芸術。アルバムは、これが今の私のベートーヴェンですというものをすべて注入して冷凍保存したようなものです」と話すヴァイオリニストの千住真理子さん。
10月に『ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集Vol.1』をリリースした。ピアノは横山幸雄さん。自身にとって初の全曲録音による2枚組だ。
「いつか全曲録音を」と思いながらも、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタにはガラス張りの印象があり、「正真正銘の自分がそのまま出てしまう怖さがあった」という千住さんが、「そろそろ、その“いつか”かな」と感じたのは約1年前。奇しくも、ベートーヴェン生誕250周年と千住さんのデビュー45周年が重なる2020年を前に、念願が実現した。
使用楽器はもちろん、2002年から所有し、「この楽器に見合う自分になるために生活のすべてを変えた」という1716年製のストラディヴァリウス「デュランティ」だ。
「聴力を失っていく絶望の中、それでも作曲し続けたベートーヴェンの音楽には、人が持っている感情がすべて入っていて、そこに魅力を感じます。できれば部屋を暗くして、まずは頭から5曲通して聴いてほしいです。1曲ごとに違う個性を出しているベートーヴェンの全体像が、きっと見えてくると思います」
そんな千住さんも20歳の頃、天才と呼ばれるプレッシャーに苛まれたことがあった。しかし、ボランティア団体の依頼で訪れた福祉施設での温かい拍手と空気に救われ、復帰。以来、独自のボランティア活動を続けている。
「見えない心の交流があって、私自身、非常に癒やされますし、なんだか元気になったといった感想をいただくと、音楽は心の力になれる、だから私たち人間には必要なんだなと実感します。一人でも多くのかたにクラシック音楽に触れてもらえるよう、これからもいろいろなところで演奏していきたいですね」
『ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集Vol.1』
3850円(税込み)
UCCY-1101/ 2 Universal Music
2019年12月20日に福生市民会館(東京)、2020年1月19日に荘銀タクト鶴岡(山形)で『千住真理子ヴァイオリン・リサイタル』を開催。また1月25日には東京芸術
劇場にて日本フィルハーモニー交響楽団『コバケン・ワールドvol.24』に出演。
詳細は公式HPまで。
トップス/セブンティ(東レ・ディプロモード 電話03-3406-7198) 構成・文/岡﨑 香 撮影/小澤正朗 ヘア&メイク・スタイリング/稲垣直美
『家庭画報』2020年1月号掲載。この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。